「ぬ、鵺君、あのね・・・!」 びしっと肘を一杯に伸ばして鵺君に向かって伸ばす。ぶわっと汗が噴き出す感覚がして、目じりが熱くてなんだか泣きそうだ。 だけど、それを堪えて腕を伸ばして鵺君に手に持った箱を鵺君からよく見えるように、目線に合わせて腕を上げる。ああ、どうしよう、顔が熱くて、息が出来ない。こんなにぎゅって持ってたらチョコレートが熔けちゃうのに、これから私が自分で言うことを考えると、さらに強く握ってしまって、箱がぺこっと音をたてた。 あ、あうあああ、こ、壊れる・・・!! 「ん??なんだよ・・・・・・ポッキー?」 「ぽ、ぽっきーです・・・!」 ああ、声が震えてる、恥ずかしい。ぽっきー、ぽっきーです。極細的なやつじゃなくて、普通のだけど。鵺君が怪訝そうに見てる先には赤いパッケージの至って普通のポッキーがあって。 は、恥ずかしい・・・言う前なのに、もう恥ずかしいよ・・・!! 「あ、あの、あのね・・・鵺君」 「ん?おう・・・」 不思議そうな顔をしながらも私の話を聞いてくれようとしている鵺君の顔は本当に格好良くて。ああもう、どうしよう。凄く好き。 って、そうじゃなくて、いやそうなんだけど・・・でもそうじゃなくて!兎に角私はこの日のために必死に考えた口実をもう一度頭の中でくりかえした。 「あ、あの・・・あの、私と・・・私と、ポッキーゲームしてください!」 「・・・・・・・・・・・・・・・は?」 返ってきたのはポカンとした鵺君の声。それにじわりと目に涙が浮かんで泣きそうになる。あ、やばい、我慢しなくっちゃ。嫌がられても、我慢、しないと。 「ご、ごめん、ね。あの、嫌なら、いい、から」 「いや・・・別に、嫌ってわけじゃねぇよ」 涙を堪えるために俯いた私は鵺君の言葉にぱっと顔を上げた。口を押さえてる鵺君の頬はどこか少し赤くて、その熱が伝染したみたいに私の頬もじわじわと赤くなっていく。 いや、じゃないんだって。 鵺君のその一言だけで空だって飛んでしまいそうだ。 私は外側のパッケージを開けて、それから二袋に小分けされているポッキーの袋を、片方だけ開いた。それからチョコのついてない方を取り出してから、それからどっちをくわえようか迷う。 なんか手で持った方を向こうに差し出すっていうのも嫌な気分にさせないかな。別に汚いわけじゃないけど、人の手で持った方を口にくわえるって、なんかやな気がする。 結局迷った末に、私が口にくわえたのは、チョコのついてない方だ。 「お、おねがひしまふ・・・!」 「・・・・・・おう」 口にくわえたままのせいでまともに喋れなかったけど、察してくれた鵺君が頬を赤らめたままゆっくりと近づいてくる。それから、チョコのついた先の方を鵺君の口が銜えた。 さく、さくさくさく・・・さく。 ついさっき買ったばかりのポッキーは何とも爽快な音をたてて私と鵺君の口の中へと噛み砕かれていく。その度に、ただでさえ長くないポッキーがどんどんと短くなっていって。 5cm・・・4cm・・・。 確か、3cmくらいで折っちゃえばいいのかな、私から折ればいいのかな・・・それとも、鵺君が折るんだろうか。私から折るのはもったいない上になんだかそうするのは寂しくて、結局私は折らないことにした。だってなんか上手く出来そうにないし。・・・あわよくば、なんて期待も込めて。 だから鵺君が折ってね、ってなるべく視線だけで見つめてみた、ら。 「ん、ぐ・・・!」 3cmあったはずのポッキーが一瞬にして鵺君の口の中に消えていって。突然迫る鵺君の瞳に、私は反射的に目を閉じた。ら。 ちゅ、ちゅ、と口元で短い音がして、最後にと言わんばかりに生温かい湿ったものが唇の上を滑った。答えなんて言われなくても分かる・・・鵺君に、きす、された。 「ぬ、ぬぬ、鵺く、」 「あのな・・・」 「ふぁ、ひゃい・・・!?」 至近距離で鵺君が話すせいで、その息とかが全部間近に感じる。後ろに下がろうとするとぐいっと引き寄せられた。 「キスしたいなら、そう言えよ」 「・・・う、はい・・・」 |