A・Tを多少かじってるなら誰でも知ってる。
むしろ、かじってなくても知ってる。

窓際の後ろから2番目という好ポジションをゲットする触角が目立つ少年は、雷の王だ。


名前は、鵺。




「というわけで、勝負しませんか。鵺君」
突然やってきたあたしの言葉に、鵺君は目を見開いた。

そのままゆっくりとあたしを上から下まで見る。

さん、だよな?A・Tやってるようには見えねぇんだけど・・・」
「はい、です。というか見た目で判断しないでください」

うん、まあ確かに見た目で見れば、普通にそのへんにいる女子だ。
かといって名が知れ渡るほどの有名なライダーかって言われたら、沈黙を返すしかない。


でも、どうしてもあたしは戦わなくちゃいけないんだ。

渋ってる鵺君に、あたしは机をバンと叩いた。


「目的は別に玉璽じゃありません。ええからさっさと勝負しろや、おい」

・・・とと、本性が・・・。



ゲフンと一つ咳をして誤魔化してから、また鵺君と向かい合った。

「そうですね・・・じゃあ、勝負してくれないなら、『どうしてしてくれないの!』って大声で叫びます」
あえて、主語は抜いて。

さぁ、どんな噂が立つか、楽しみですね?
ニッコリと笑うと、鵺君がちょっと顔を青ざめた。


「・・・わかった」
いいぜ、と頷いた鵺君に、あたしも頷いた。


「じゃあ、日曜日の夜、この学校で」


この辺は確か鵺君の場所だったはず。
そう思っていうと、鵺君は頷いた。




それから、ちょっと経って、あっという間に日曜日がやってきた。
鵺君はバサバサーって大きなマントを纏ってるけど、熱くないのかな、あれ。

「こんばんは、鵺君」
「おう・・・って、マジでライダーだったんだな」
ちらりと鵺君があたしのA・Tを見た。
まぁ、明らかに新品じゃないのは分かるよね。


「じゃなきゃ勝負挑まないって」
「確かに」
頷く鵺君と夜の学校の校庭で向かい合った。



「あ、そういえば、玉璽以外だけど、一つ賭けてもいい?」

「あ?」
首を傾げた鵺君に、あたしはニッコリと笑った。



「鵺君が負けたら、付き合ってください」





戦え!恋する乙女



( あたしが負けたらそこは貴方のご勝手に )