「今日はエイプリルフール!ってなわけで嘘をついてもっ」
「宣言してすることじゃねぇよ」
イエーイと叫んだに、すかさず鵺が突っ込んだ。

「えー?だって、エイプリルフールじゃん。四月バカじゃん」
「アホか。第一、エイプリルフールっつーのはな、本当は日頃の不義理を詫びる日なんだよ!てめぇが詫びろ!」
「そんな昔の習慣、今守るわけがないでしょうがっ!」
さあ詫びろ、と言わんばかりに踏ん反り返った鵺を、は思いっきり蹴る。

ちなみに、みぞおちにストライクだ。


「て、てめっ・・・!」
「ふふーんだ、このちゃんを怒らせた、鵺のせいなんだから」
ひょっひょっひょと笑うに、鵺がガバリと顔を上げた。

「何がちゃんだっ!キモいんだよっ!」
「キモっって、酷いっ!」
ギャーギャーギャーギャー言う二人に、やっと静止の声が入った。

「ほら、ちゃんも、鵺君も。皆チームメンバーの前なんだから、リーダーは落ち着かなくちゃダメだよ?」
BLACK CROWのリーダーである鵺と、同じく、ジェネシス傘下のチームのリーダーのに、スピットはどうどうと静止をかけた。

だが、後ろのチームメンバーは、いつものことだと、傍観状態だ。
むしろ、我関せず、という感じだが。

「ダメだよ。ちゃんと鵺君の喧嘩は、痴話喧嘩なんだから。止めなくてもいいんだよ?スピット」
「んーそれでもね、タツ君。そろそろ僕が呆れてきちゃうから」
「おい!ちょっとまてタツ!!痴話喧嘩ってなんだ、おい!!」

「えー?夫婦喧嘩は犬も〜っていうでしょ?」
「エっちゃん!ダメだよ、本当のこと言っちゃ!」

「・・・お前等・・・いい度胸だなぁ!!!」


ギリギリと、鵺の握られた拳が、音を立てる。

けれど、それが落とされる前に、鵺の腕が、ぐいっと引かれた。
「鵺!ハイテンションになったついでに競争しよう!」
「あぁ?」
「いいから早く!」
グイグイと腕を引っ張られて、に引かれるままに、空へと飛び出した。

「じゃ、ちょっとしたら帰って来るから〜」
という言葉を残して。




「ちょ、おい!離せ、!」

「鵺君に問題です!今日は何の日?」

掴まれた腕を離させようとする鵺に、はぐるっと振り返って言う。
人差し指を立てて、さながら教師のように。

「あ?お前が自分で言っただろ?今日はエイプリルフールだろ?」
「そう!その通り。今日はエイプリルフールだからね!」
「?おう」
梓の会話の意図がつかめなくて、首を傾げた鵺に、はにっこりと笑って。


「鵺、大嫌いだから!」


「は!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。!!!!!」


一度驚いたような顔をして、それからずっと考え込んで。
やっと気付いたように上げた顔は、真っ赤に染まった顔。


「ば、ばかやろーーー!!!」
夜の空に、鵺の叫び声だけが響いた。





大嫌い



( ねぇ、その内に潜められた本当の想い、貴方は受け取ってくれる? )