「好きです!」 あたしは見事捕獲したサンタの鵺君を捕まえて告白をした。 ちなみに、サンタっていうのはサンタクロースのことで、お話に出てくるようなお爺さんの元祖サンタクロースが引退した後、引き継いだのがサンタクロースという名のチームのプレゼント配達人。 そして今目の前で捕獲されてるのがその一人の鵺君。 赤い服に大きな袋を持って、その大きな目を見開いてる。 「好きです、鵺君!」 きっかけは一年前。たまたま夜中に起きて空を飛んでる鵺君を見た時に恋に落ちた。憧れなんかじゃなくて、本当に。 それからはクリスマス以外は書類処理や子ども達の素行調査(いい子にしたらサンタさんがプレゼントもらえるよっていうアレ)とか色々しながら世界中を転々としてる鵺君の情報を探すのは大変だった。 本当に・・・。 兎に角、それで色々情報を引っ張り出して、鵺君の名前とか担当地区を見つけて、あたしは今年のクリスマスを待ち望んでいた。 鵺君が必ず来てくれるようにお手伝いだってたくさんしたし、慈善活動だって色々したし。 そうして待ち望んだこの日にサンタが入ってくる窓(煙突は最近無いから・・・)に罠をしかけてた。 ちゃんと、あたしの家が鵺の担当の最後の家だってことも調べ済みである。 「な、何言って・・・」 捕獲されてる鵺はあたしの突然の告白に顔を真っ赤にしてた。 「あたしの名前はです!鵺君のことが前から好きでした!」 恋人になってください!っていうあたしに、鵺君は口をパクパクと動かした。 「あ、あ・・・アホかーーー!!」 さすがに夜だからか小さな声で鵺が叫んだ。 「な、な、な、何言ってんだよっ!俺はお前のことなんて全然しらねぇし、恋人にだってなれるわけもねぇだろ!?サンタは公正じゃねぇといけねぇんだよ!」 「でも!サンタクロースにだって恋人がいる人がいるじゃないですかっ!」 そんなの無問題!と切り返すと、鵺君がぐっと詰まった。 「それはそうだけどよ・・・」 「じゃあ、何も問題ないでしょ?」 というと、鵺君が一瞬納得しかけて、それからぱっと顔を上げた(ち。納得してれば良かったのに・・・)。 「そういう問題じゃねぇ!それに、お前だって俺のこと知ってるわけじゃねぇだろ?」 その言葉にちょっと詰まった。 確かに、鵺君の名前とか、担当地区とかは分かったけど、鵺君自身は分からなかった。 でも、今だって言える。 「あたしは、鵺君が好き」 「・・・だから」 否定しようとした鵺君手を掴んで、あたしはしっかりと目を見た。 鵺君のこと、あんまり知らないけど・・・好きってそれだけじゃないでしょ? 「一生、プレゼントなんていらないから!」 確かに、鵺君のことは知らないけど、今たくさん知ったものがある。 捕獲されても怒らなかったりとか、告白をちゃんと受け止めてくれたりとか、純情だったりとか。 それを知って、あたしは今もっと好きになってる。 「何にもいらないから・・・鵺君を、ください」 確かにきっかけは一目惚れだったよ。でも、今じゃ収まりきらないくらいに好きって気持ちが溢れてる。 実際に話をしてみて、もっともっと好きになってる。好きって気持ちは、理由なんてつけられないんだから。 硬直してる鵺君に、あたしはちゅっと唇を重ねた。 |