「もしも、あたしが死んだら、どうする?」



ポツリ、ととめどないことを言ってみた。
泣く、なんてこと、期待したわけじゃないけど。
ただ、少し、聞いてみたくて。


「何だよ、突然」
鵺が眉間に皺を寄せて、不可解、という顔をする。

そんな鵺も格好いいけどね。
そう言うと、鵺に、アホと言われた。
何よ、アホ毛が立ってるくせに。

「それよりも、あたしが死んだら、鵺はどうする?」
A・Tを履いて、空を飛んで。
また日常に戻るのだろう。
だって、彼は空にあるべきなんだから。
空をかける、まるでいかずちのような人なんだから。
きっときっと、また空へと戻るんだろう。

「ねぇ」

あたし、なんて足かせが外れたことで、きっと、もっと自由に、空を飛ぶんだろうなぁ。


ああ、考えてて憂鬱になってきた。
第一、雷を掴まえられたこと事態が奇跡だったのかもしれない。
というか、今でもたまに信じられなくて、夢じゃないのかって思うけど。
「具合でも悪いのか?」
と心配気に言う鵺に、ヒラヒラと手を振った。
「健康体ですよ。超健康。健康診断で五重丸もらったくらいに」
健康すぎて、信じられない、とまで言われた。やっぱりA・Tって健康にいいんだなぁ・・・。
「ふーん」

「いやいや、流さないでよ」
さっきの質問に答えてくださいって。
「大丈夫だ、答えは決まってるから」
雑誌から目を離さないで、鵺があたしの頭を撫でる。
何?子ども扱いですか?ブーブー。

が死んだら」
パタン、と鵺が雑誌を閉じた。

「あたしが、死んだら?」
ああ、なんか、今更、死んじゃうことが、少し怖くなってきた。

「俺は」
鵺の眼が、あたしを見る。

「鵺は・・・?」
空へと帰ってしまうんだろうか。
たった、一人で。


「一緒に死んでやるよ」


鵺とあたしの距離が消える。
「一緒に、死んでくれるの?」
そっと離れた体温に、縋りつくように、言うと、鵺が笑った。


「約束」
一緒に空に還ろう。





誓いの口付けを、何度でも



( その言葉の雨は、あたしを捕らえてやまないの )