落ちてた鳥を拾いました。
夜のように、真っ黒な鳥でした。
あたしは、その鳥を拾って、部屋に入れました。



「・・・そうしたら、懐いちゃった」
「・・・鳥が?」
そう、と大学の友人に頷いた。

カフェテラスは白で統一された、清潔感溢れた場所だ。
そんな中で、あたしの心はかなり真っ暗闇だ。

「でも、別にいいんじゃない?鳥くらい。可愛いじゃない」
友人の頭の中に浮かぶのは、何色か分からないけど、パタパタ飛ぶ鳥。


じゃない。
じゃないんだ、友よ。


「それが、小鳥ちゃんだったらねぇ・・・ふふふ」

ああ、残念なことに、友よ。
その小鳥ちゃん・・・っていうと怒られるけど、その鳥は、一人の少年だったのよ。
しかも、かなり厄介な。




「・・・鵺君」

扉を閉めようと、鍵を閉めようと関係ない。
窓の鍵を閉めていれば、表から、弟だってやってくるし、一体管理人は何やってんだか・・・。
だから、しかたが無く鍵をあげたのだけれど。

「ん、ああ、、おかえり」
毎日入り浸り状態っていうのは、どういうことなの?

かといって、鍵を取り返すわけにもいかない。
代わりに窓を開けて、泥棒に入られたら大変だ。

かといって、鍵を取り返すわけにもいかない。
前みたいに、何時間も扉の前で待ってたらかわいそうだ。


「ただいま。そういえば、鵺君、ご飯は?」
もう、彼の分までご飯を作るのが習慣になってしまった。
「食べる」
雑誌から目を上げずに答える鵺君を見ながら、あたしはブツブツと考える。

昨日は野菜中心だったから、今日は卵にしようかな。
オムライスとか、いいかもしれない。
当たり前のことのように、当然のことのように、鵺君の栄養についてまで考えてしまう。

もうこないようにさせなくちゃ。
そう思いながらも、今日もいてくれますように、と願うあたしがいる。
彼女が出来たら、こなくなっちゃう。
嬉しくて、哀しいアタシがいる。


ご飯を作るより、何よりも救えないのは。


年も随分離れたその鳥に、懐いてしまったのはあたしの方ってこと。





並べた文句は飲み込んだ



( 結局、君に依存してしまったのはアタシだなんて、なんて救えない! )