「・・・死体?」 目の前の固まりに、あたしは眉を寄せた。 黒い布に包まれたソレは少しだけ人の頭をのぞかせて、そこに落ちている。 散らばった糸に所々擦り傷の多い少年。 「死んでないよね?」 半ば確認するように口に手をあてると、スースーと小さいながらも息を感じた。 「どうしよう」 やっぱり、救急車を呼ぶべきなのかしら。 そう思ったけれど、携帯は残念なことに部屋に忘れてしまっていた。 「あー・・・どうしようかなぁ」 「くっ」 考え込んでいると、その少年から声が聞こえて、あたしは何時の間にか部屋に運んでいた。 「・・・そんなにがっつかなくても大丈夫だよ」 取ったりしないから。 そう言ってしまうほどに目の前の少年はあたしが作ったチャーハンにがっついていた。 どうやら怪我だけで別にたいしたことはないらしい。 「・・・あーごちそうさまでした」 「おそまつさま。えっと・・・君、名前は?」 食器を受け取って、聞くと、その少年がああ!と思い出したように言った。 「俺は鵺。夜の鳥で鵺」 「そう、鵺君っていうんだ」 ちょっと変な名前って思ったのは秘密。 だって、名前のことを言うなんて最低だもの。 「アンタは?」 「あたし?あたしは」 「ふーん、か」 おい、呼び捨てかよ。 明らかに5つ以上年下の鵺君に突然呼び捨てで呼ばれたけど、まぁいいや、と内心納得した。 どうせ、もう逢わないんだし。 「じゃあ、そろそろお家に帰ったら?」 お家の人が心配してるよ?というと、鵺君は「あー・・・大丈夫かな、チビ共」と呟いて、窓を開けた。 「なぁ、」 「?」 「今度来るときもここ開けといてくれよ」 「は?」 その言葉をあたしが理解する前に、鵺君は大空を舞った。 救急車・・・呼べばよかった・・・とあたしが後悔するのは鵺君がやってくるようになってからだった。 |