「好き」



隔離されたような小さな中庭の影で眠っていると、突然声が聞こえた。
ATの練習場とまで言われている場所だから人は滅多に来ねぇ(ATやるっていっても夜くらいなんだけどな)から絶好のサボリポイントなんだけど、突然声が聞こえた。

ふと見えたのは同じクラスの・・・たしか、だったか?
そいつが壁に向かって告白をしていた。


・・・何やってんだ、あいつ。


「うーむ、何か違うなぁ」
そう言っては考え込んだ。
告白の練習してんのか・・・?

「お前のことが好っきゃねんっ!・・・いやいや、何で方便?」

ドドーンと叫んでからそれからは首を振った。
一人慌てていて、何か可愛い・・・。

「す、好きだぜ!」

男らしい。
それもまた気に入らなかったらしく、首を振って考えていた。

「一生味噌汁を作ってください!・・・って、告白すっ飛ばしてどうするのよっ!!」

逆に引かれるよ!とうんぬんと悶える。
って面白ぇやつだなぁ、ほんとうに。


壁に向かって顔を真っ赤にして、ふぬーとかって叫びながら告白のセリフを考えている。

「俺と一緒に人生という名の道を歩こうぜ!」

ニカーと笑って壁に向かってグっと親指を立てた。

「だからプロポーズじゃないんだって・・・というか何で男役・・・?」
今度はズーンと暗い背景が付きそうなほどに落ち込んだ。
浮き沈みが激しくて面白い。

の性を名乗って・・・これも違うんだってば!」
恋する女は可愛いとかって言うけど、も例に漏れず可愛かった(あれ?)。
壁に告白をするは顔を真っ赤に染めて慌てふためいて。

誰に告白するんだよ、と思うと何だか凄くイライラしてきた(・・・ひょっとして)。


「愛羅武雄!・・・引かれる・・・嫌われるよ、確実に」

告白される奴が何か凄くうらやましい。
・・・あれ?俺、ひょっとしてのことが(ちょっと待て、ちょっと待てって!)、
「ここはストレートに行くべきだよね・・・うん」
ポツリとが呟いた。


スーハーと大きく深呼吸をした。



「好きです、鵺くん」

ペキ、とありきたりなくらいに音を立てて枝を踏んでしまった(何だこの王道展開っ!)。
真っ赤な顔になったがこっちを振り向く(やばい、正面から見るとすっげぇ可愛い)。


「俺も、スキ、だ」
多分、負けないくらいに俺の顔も真っ赤なんだろうな。





熟れた林檎のように



( お互いその赤い顔のまま一時間は動くことが出来なかった )