「本当にやりやがったっ・・・!」
ダンと鵺が荒々しく机を叩いて、はぁと大きく溜息を吐いた。
ちなみに今は放課後で、部活の生徒たちの声が響くだけだった。


「だって、鵺君が補習にひっかかるのが悪いんじゃない。ね?」
「ね?じゃねーよ、ね?じゃ。第一なんで俺だけこんなに採点が厳しいんだよっ!」

なんだ、この字が好みすぎて涙が溢れて読めないから採点不可能ってっ!と鵺が叫んだ。

んと、まぁ、そのまんまよ?
「だって、あたし鵺の字って好きなんだもん」
「だからって涙は溢れねぇよ」
プリントを持って、ガクリと項垂れる鵺の前に座った。



「ねぇ、鵺」
ちょっと前に出ると、椅子がキシリと鳴った。



「・・・んだよ」

あたしが真剣な顔をしてるせいか、ちょっと怪訝な顔をして、鵺が少し下がってキシリと鳴った。
また一つ、あたしが少し前に出て、鵺が下がった途端、後ろの机にカツンと当たった。
立ち上がって、鵺の横に手を伸ばして、後ろの机に鵺を閉じ込めるように手を置いた。


「・・・・・・・・・なんだか、いけないことしてる気分ね」

「いけねぇことだろっ!!」



じっと、どれくらいそのままでいたのか分からなかったけど、どんどん紅い夕陽が教室の中に入ってきて、鵺とあたしの腕がどんどん紅く染まっていった。


「ねぇ、鵺」
「・・・んだよ」
同じ会話を繰り返して、あたしは口を開いた。


「鵺は、嫌い?」

「あ?」


「あたし、鵺が好きよ」
「っ!」
ボンっと音がして、鵺が顔を真っ赤にした。


あたしは首を傾げる。
「鵺は、あたしのこと嫌い?」



あ、



「俺、は――が、・・・・・・・・・・・・・・」


「あ!鵺問い5間違えてる!!」
あんな簡単な問題、なんで間違えちゃうの!!
ピラリと風に揺れた解答用紙が見えて、あたしは席に戻った。


「もう、ここは単純に訳せばいいのよ?」
ポイントを書き込んでいると、目の前で鵺がフルフル震えていた。


ってめっ・・・!・・・・・帰るっ!!」


「え!?鵺!?」


鵺が真っ赤な顔して突然立ち上がった。
ガラリと扉を開けて、顔だけ振り返る(その顔は、すごく真っ赤だった)。



「嫌いだった無視してるだろうがっ!」
バンっと近くの窓が震えるほどに力強く扉を閉めて、鵺が歩いていった。


考える暇も無いくらいに体が勝手に動いて、続くように扉を開けて、廊下を歩いている鵺の背中に飛びついた。

「鵺もう、大好きよっ!」

「うるせぇっ!」





夕暮れラブロマンス



( もう!鵺ってば照れ屋さんなんだからっ! )