「六法全書って、人が殺せる分厚さですよね」 「・・・誰か殴ってきたの?」 「何でそうなるんですか」 六法全書を開いて勉強をしてる成歩堂さんに声をかける。 王泥喜くんが見たらきっと驚いてその御自慢の声で窓ガラスが割れそうなほど叫ぶんだろうなぁ・・・。 その場合窓ガラス代の請求は王泥喜くんでいいんだろうか・・・ううむ、悩んじゃうなぁ。 「昔、みぬきちゃんが丁度いいからって押し花に使ってましたよね」 「あー使ってたね。まあ、六法全書は結構こまめに買い替えるから、古いのなら構わないしね」 ぐ、っと成歩堂さんが椅子の背もたれに体を預けて、ぐっと背伸びをした。 司法試験に向けての勉強を始めた成歩堂さんは、毎日六法全書を開いては勉強をしている。 あのころは御剣に会うって目標があったからなぁ・・・と何やらぶつくさ言いながら開いては勉強をしている。 そんな姿はどうやら王泥喜くんには見せていないらしい。 ・・・変なところで意地っ張りなんだよなぁ、この人。 私の家にやってきては、まるで隠れてお菓子を食べる子どもみたいにこそこそと勉強をしている。 「―――それで?」 「・・・っ!」 ぼんやりと成歩堂さんを見ながら考え込んでたせいか、ひんやりとした空気が漂ったことに気付けなかった。 ぼんやりと、光る成歩堂さんの首から下げられた勾玉。 「ちょ、ちょ・・・!サイコ・ロックは卑怯ですよっ!」 「は何を隠し事してるのかな?」 「な、なるほど、さ・・・」 ぐい、っと成歩堂さんが私の腕を引っ張った。 バランスを崩した私が座りこんだのは、成歩堂さんの膝の上で。 「な、な・・・成歩堂さ、」 「だーめ」 後ろから腰に手を回されて、耳元で息を吹き込むように囁かれると、体から力が抜けていく。 う、うぅ・・・卑怯だ。 「が不機嫌そうな原因は・・・これ?」 「っ・・・!」 トン、と指先で成歩堂さんが六法全書の表紙を叩いた。 「ち、ちがいま、」 耳元で響く声を振り切るようにぶんぶんと首を振って、成歩堂さんの腕の中でもがいた。 なのに、またぐいっと引っ張られたかと思うと、耳に、くちびるが・・・触れて。 「―――本に、嫉妬した?」 パリン、と、はじける音がした。 |