パカ。・・・パカ。

折りたたみの真っ赤な携帯電話を手の中でいじくる。
とは言っても、開いたり閉じたりするだけだけど。

待ち受け画面にはトノサマンの画像。
外側は真っ赤でストラップもついてなくって、誰の携帯かまるわかりだ。

怜侍を見送った後にソファに座って、その違和感に手を探ってみればこの通り。



「ふつー、携帯忘れて帰る?」
怜侍は浮気はしないだろうけど、浮気してた場合一発で証拠取られちゃいそうよね。
・・・いや、怜侍の場合は浮気してたら証拠は残さないか。
何て言っても、僅かな証拠一つで戦局が変わるようなところにいるわけだし。

・・・アドレス、見たら怒るかな。
でも朴念仁な怜侍のことだから、見たっていっても「そうか」で終わりそうなのよね。
やましいことがないと物凄く堂々としてるし。

―――うん。よし、見ちゃえ。

「えーっと・・・糸鋸刑事に、検事局に、成歩堂君に、冥ちゃんに真宵ちゃんに矢張君に・・・うわぁ、色気のないアドレス帳だこと」
私の知ってる人か仕事関係しかないって・・・。
いや、彼女としては安心できるんですけどね・・・別の意味では凄く心配だわ。

「こ、今度はデータフォルダよ!きっとそこには絶対にもうちょっと疑わしいようなものが・・・」

カチカチとボタンを操作して、データフォルダを開く。
「・・・デフォルトとトノサマンとヒメサマンしかないじゃない・・・」
データフォルダを僅かながらに占拠するのは、元々入ってる画像に、怜侍の大好きなヒーローの画像。
本当に、トノサマンが好きにもほどがあるわ・・・。

「―――と。ん?フォルダに一枚画像・・・?」
鍵のマークがついたフォルダに、一枚だけ画像が入っていた。
・・・ほほう。
「怜侍くんったらちゃんとそういう画像持ってるんじゃなーい。うんうん、安心したなぁ」
流石にね、トノサマンとヒメサマンしかない画像フォルダはちょっと彼女として心配だったのよ、うんうん。
まあ、ここで女の人の画像ばっかりだったら、多分携帯折ってたかもしれないけど。

「さてさて、御開帳してみようじゃない・・・えーっと、パスワード・・・怜侍の誕生日とか?・・・・・・って、そんなに簡単なわけが――――――あったし」
携帯の画面には解除しました、の文字。
いやいや、怜侍。もうちょっとひねろうよ。

「まあいいや。御開帳御開帳―――」





?すまないが携帯を忘れて・・・っと!ど、どうした?」
玄関から入ってきた怜侍に思いっきり飛び込む。
倒れそうになるけど、気にするもんか。
・・・?」
「・・・怜侍、あのね・・・」
「なんだ?」
顔に熱が集中して、なんだか上手く喋れそうにないけど、多分二文字だけだったら言える。
「好き」
「・・・私の方ももとより、だが?」
不思議そうな顔をしている怜侍の胸にぎゅっと顔を押し付けた。





隠された、その奥の恋



( 鍵の付いたフォルダに大切に隠されていたのは、眠る私の顔 )