頭や体の下にはシーツの柔らかな感触が広がっているというのに、この拘束感は一体何なんだろう。 息苦しいとは言わないけど、まるで言うなら、そう、抱きしめられているような。 でもその正体を確かめるにはあまりにも眠すぎる。やたら倦怠感もあるし、体も重い。 だって昨日は―――。 「・・・あれ?」 ぱちり、と。いやもうそんな可愛らしいものじゃない。 ばちりと音を立てて瞳を開いてみれば―――ああ、嘘でしょ? その男前な(本人には絶対に言わないけど)顔に無精髭をはやして気持ち良さそうに眠る、成歩堂さんの姿。 勿論さっきの拘束感は成歩堂さんの腕だ。 ぷーんと匂うのは発泡酒。 ・・・酔った勢いって本当にあるんですね!わぁい、勉強になったなぁ。 「どうしよ・・・こういう場合って起きる前に逃げとくべきなのかな・・・」 「―――どうしてそうなるの」 「だってドラマの定番で、」 ・・・・・・・・・あれ? 「・・・な、成歩堂さん・・・?」 おそるおそる顔をあげてみれば、そこにはにっこり笑顔の悪魔・・・もとい、成歩堂さん。 「おはよう、」 「お、おはようございます・・・」 爽やかな笑顔なはずなのに、恐ろしく感じてしまうのは何故なんだろう。 ・・・気のせいだと思いたい。 「っていっても、まだ眠いんだけどね」 ぺたり、と成歩堂さんの素肌が頬に当たる―――どうやら、抱き寄せられたらしい。 そう気付いた時には成歩堂さんは私をがっちりと抱きしめていて、動くことすらままならない。 「な、な、成歩堂さん・・・!」 「もまだ眠いだろう?みぬきが帰ってくるのは夕方だし、今日は事務所も休みだから、オドロキ君もこないよ」 「え?あ、あ・・・はぁ」 つらつらとそう反論を先回りして封じられると、なんとも言えなくなる。 普段は答えを先回りなんてせずに、こっちが尋ねてくるのを待ってるくらいなのに。 よっぽど、眠いのかな。 とんとん、と成歩堂さんの大きな手が私の背中を優しく撫でる。 そのたびに、まるで手招きされるかのように睡魔が襲いかかってくる。 まあ、確かに私も休みだから・・・もう、いっか。 「おやすみなさい、成歩堂さん」 「ん、おやすみ」 前髪の生え際あたりにある成歩堂さんの顎が揺れるのを感じながら、ゆっくりと、私は意識が落ちていくのを感じた。 |