「公園っていうよりは、キャンプ場みたいよね。ここ」
「・・・」

私に手を引かれるまま黙々と歩き続ける怜侍を振り返って笑う。
返ってくるのは無表情+無言だけど、気にしない。だってむしろ怜侍が満面の笑みとかの方が気持ち悪いもの。

「もっと公園っていうと遊具があったりとか、そういうのを思い出すんだけど」
「・・・
「ここはだだっぴろいけど、池があるだけだものねぇ」
「―――!」

ぎゅ、っと向こうから手を握られて、私は仕方がなく振り返る。唇を尖らせて、それはそれは憮然そうに。
「なあに、怜侍」
「・・・別に公園に出かけるのは構わない。・・・・・・だが、何故この公園なのだ」

この公園、はひょうたん湖公園だ。大分前にヒョッシーだかなんだかで話題になったらしいけど、確か結局あれは成歩堂くん曰く、事件の影にやっぱり・・・とかなんだとか。
怜侍にとってはエレベーターとか地震とか、そんなのに近いくらいに嫌な思い出がある場所だ。
・・・本当に嫌なら振り払って逃げればいいのにね、怜侍の馬鹿。

「ねえ、怜侍。ここの利用者って子どもより大人が多いのよ」
「・・・まあ、確かに子供向けの施設ではないからな」
「となると、やっぱり普通の公園より事件が多いと思うのよ。色々と統計的に考えて」
「・・・・・・」
怜侍が眉を顰める。
思い出したのはあのボートの上で起きた事件なのかしら。
私、怜侍の困った顔は好きだけど、私以外のことで困ってる顔って―――大嫌いなのよ。

「もしここで事件が起きたとするでしょう?・・・そうしたら、怜侍がその事件の担当になるでしょう?」
「・・・別に私とは限らないと思うが」
「でも100%怜侍じゃないってことはありえないでしょう?」
まあ、別に怜侍が担当しないなら、それはそれで構わないのよ。ええ勿論。
「それは・・・そうだが」
「それでこの公園に入ってきたら、怜侍が思い出すことは何?」

あの幼い時のエレベーターの中のこと?それともボートの上での事件?
―――それとも、裁判の時の成歩堂くんかしら。

まあ、思い出すことが何であろうといいんだけど、どうだっていいんだけどね。
だけどそれを思い出して、怜侍が苦しい思いをするっていうのが嫌なのよ。・・・私以外のせいで、感情を揺さぶられるのが。


「ねえ、怜侍。ボートに乗って湖の真ん中でキスして」
「―――は?」
「いっそのことそのまま最後までなだれ込んでくれたっていいわ」
「ちょ、ちょっと待て!!君は何を、」
顔を真っ赤に染め上げてうろたえる怜侍。
私、その顔が見たかったのよ。


「ねえ、そうしたら貴方は一番最初に私のことを思い出すかしら?」





回想の最優先事項



( 今の貴方を構成する大切な記憶だって、私より先に思い浮かぶことは許さないわ )