「者どもぉおおお!!奴を探し出せぇええええ!!!」 ビリビリと窓ガラスが震えるほどの大音量。まぁ、いつものことなんだけど。 「行きましたよ、コムイさん」 「いやーすまないねぇ、」 あはは、と笑ってあたしの後ろから出てきたのはコムイ・リーさん。 一応上司様で、結構偉い人です。 「匿ってあげるのは今回だけですからね。第一仕事放り出しちゃ駄目ですよ」 「ぶー」 「全然全く持って一片も可愛さの欠片すら砂漠に落とした米のように見つかりませんが」 「うわー、手厳しいね」 一瞬寒気がしたんですけど・・・。 寒い寒いと腕を擦ると、コムイさんが苦笑して顔を元に戻してくれた。 この人、黙ってれば格好いいのに・・・。 「それにしても、コムイさん。本当に駄目ですよ、お仕事放り出しちゃ!」 「んー、分かってるんだけどね。ほら、もさ、逃げ出したいときもあるでしょ?」 「コムイさんは逃げすぎです」 とりあえずいい加減そのサボタージュを何とかしてください。 上に報告されてクビにされてないのが不思議なくらいのサボリっぷりだよなぁ。 まぁ、仕事は凄いからクビにされないんだろうけど。 「ねぇ、そういえば案なんだけど」 「はい?」 「こういう武器はどうかな。題して『リナリーに近づく男どもは殲滅だマシーン!』」 ・・・・・・このシスコンめ。 「コムイさん、あたしの意見を言わせて頂いてもよろしいでしょうか」 「ん?なんだい?」 何でも言ってくれ、みたいに鼻を高くしてるけど。 とりあえず、その鼻へし折らせていただきますね。 「そのリナリーちゃんに近寄る男を殲滅して「お兄ちゃんなんて大っ嫌い!!!」と二度とリナリーに話をしてもらえなくなるか、その案を見ないことにしてリナリーちゃんと今までどおり過ごしていくか・・・どっちが良いですか」 まぁ、シスコンには選択権なんてありませんけど。 あたしの二つの仮定に、コムイさんが口をあけて唖然と灰になって風に吹かれていった。 「す・・・捨てます・・・」 「よろしい」 うん、とあたしは頷いた。そんなもの使われて教団の人員が減ったらどうするんだってーの。 コムイさんの被害者に泣きつかれるあたしの心労を理解してください、本当に。 「それじゃあ、そろそろ行くよ。匿ってくれてありがとう、」 サボりすぎちゃったからね、とコムイさんが立ち上がった。 「もう来ても匿う以前に部屋に入れませんからね」 「はは、心得ておくよ」 コムイさんが扉の方に向かって歩き出した。 「コムイさん、また今度はプライベートで暇な時に来てくださいね!」 そうしたら部屋に入れてあげます。って言うと、コムイさんが振り返って笑った。 「心得ておくよ。またね、」 ヒラヒラと手を振って、コムイさんが外に出て行った。 |