「よ、アリス。どこに行くんだよ」 出た・・・。あたしは内心でそう思った。 木の上でニヤニヤ笑いながら言うチシャ猫の鵺を見あげた。 「別に。どこだっていいでしょ。それに、あたしはアリスじゃなくて――」 「、だろ?」 ニヤリ、とまた鵺が笑った。 また人の言葉先回りして言うんだから! 「全く、は神経質だよな。もっと他のアリスみたいに大らかになれねぇのかよ」 「・・・それなら他のアリスのところに行けばいいでしょ!」 あーもう!付き合ってられるかってーの、この馬鹿猫! あたしは最初の予定通り、鞄を持って歩き出した。 今日は知り合いの帽子屋のシムカさんにお茶会に呼ばれてる。 多分、鵺も呼ばれてるんだろう・・・なのに態々聞くなんてさらに趣味が悪い! 「見ててあきねぇよな、は。本当からかいがいがあるな」 「うっさいわ!」 何さっきから!喧嘩売ってるの!? そういい返しても鵺はそ知らぬ顔をしていて、あたしは怒りに身を任せてずんずんと進んだ。 全くもう、チシャ猫はこれだから。 遊び好きで、苛めっ子なチシャ猫の中で、鵺は特にそんな感じがする。 他のチシャ猫はもっと優しかったりするのに・・・。 前、扉のスピット・ファイアさんに言うと、少し微妙な顔をされてしまった。 よくあることだよ、っていわれたけど、よくあって被害を受けるのはあたしなのに! 第一、他にもっと可愛いアリスがいるんだから、そっちに行けばいいのに。 奈々ちゃんとか仲良いし、そっちに行けばいいのに。 っていうか、別にチシャ猫だからってアリスと一緒にいる義務なんて無いんだから。 「おい、」 「何っ!」 うっさい、話かけてくるんじゃないわよ! 「か・べ」 突然ぐいっと引っ張られて、目の前には壁があった。 くっ、悔しい・・・醜態をさらすっていうのが、悔しい。 「わ、分かってるわよ!」 あたしはスカートを翻してまた歩き出した。 アリスだからってこの衣装っていうのが、また面倒くさい。 そんなのこと気にせずにズカズカと歩き出した。 どうしよう、こんなこと言ったら、今度こそ本当に別のアリスのところに行ってしまうかも。 他のアリスのところに行けばいいなんていったけど、行ってほしくない。 少ないチシャ猫の鵺にとっては、あたしは数居るアリスの一人だけど。 鵺があたしに愛想をつかして他のアリスのところに行ったらどうしよう、でも素直になれなくて。 「なぁ、」 聞こえた声にちょっとだけ安心した。 「だから何!」 やっぱり素直になれなくて、むっとして振り返ると、鵺がスカートを指さした。 「あんまりヒラヒラしてるやつでそんな歩き方すると、中見えるぜ?」 「馬鹿っ!!」 |