歩くたびにひょこひょこと揺れるアレ。A・Tで技なんて決めたときには軽やかに舞うアレ。
どうなってるんだか、決して伸びることもなく、短くなることもなく(もしかしたら毎日整えてるとか?)、鵺の頭の上にあるアレ。

鵺の、触角。



「つーか、触角じゃねぇよ」
スパンと切り捨てた鵺に、あたしは反論した。
「触角でしょ、触角!アホ毛にしちゃ大きすぎるもん。っていうか、一体何で出来てるわけ?」

そりゃ髪型でいったらアキラ君の髪型もおかしいけど、鵺の触角が一番気になる。
あれだよ、アキラ君のは枝毛だと思えばいいんだから。
風に吹かれてフワフワと揺れる触角を、あたしはとりあえず掴んで・・・。


引っ張ってみた。

「いでっ!!」
「つ、痛覚があるのっ!?」
が引っ張ったからだろうが!」
そんな!とあたしが叫ぶと、鵺に怒られた。そりゃ髪の毛引っ張られたら痛いよね(っていうか髪の毛なの、それ)。
手を離すと、またフワフワと揺れた。

触角でもアホ毛でもなかったらなんなんだ、これは。髪の毛なんて頑固認めないからね。
あーもう、学会に発表できるんじゃないの?触角の謎って。

「何だよ触角の謎って」
はぁと鵺が呆れたように溜息をついた。

「ちょっと、思考読まないでよ」
「読んでねぇよ。が口に出してんだろ」
まったく、と鵺は違う方向を向いた(また触角が揺れた)。


「ねーねー、これどうなってんの?」
ツンツンと軽く引っ張ってみると、やめろと怒られた。
「しらねぇよ」
「自分の髪(?)のことなのに知らないの?っていうか、これ抜いてもいい?」

「抜いたら殺す」
声低っ!さすがにこんな束(?)を抜いたらどうしようもなく痛いよなぁ・・・。



「じゃあ・・・」
あたしはその触角に、妥協案としてリボンを結んだ。
赤に白の水玉なリボンでレースつき。触角の先っぽにちょこんとつけて、まぁ可愛い。


「・・・・・・・・・」

「あぁ!ちょっと、何で取るの!?」

遠慮なくリボンを取った鵺に食い下がるように叫ぶと、そこにはにっこりと笑って米神に青筋を浮かべて・・・。
やばい、本気で怒らせた。

・・・」
「はっ、はいっ!?」
そろりと逃げようとしたあたしの腕はガシリと鵺につかまれた。
お、おお、恐ろしい・・・。


「そんなにコレについて知りたいなら、俺が一晩かけて教えてやるよ」
そ、その笑みが酷く恐ろしいんですが・・・。

「い、いや・・・もう十分かなーって」
「遠慮すんなって」
輝かしい笑みは止めてください。っていうか本気で怖い・・・。



「え、えええ、え・・・遠慮させてくださーーーーい!!!!!」









( あまりにも触りすぎると彼のプライドを著しく損ない、反撃される恐れがあるので十分注意しましょう )