お父様が大好き。
お母様が大好き。

おばあ様だって、おじい様だって、他の皆も大好きだけど、一番大好きなのは、あの人。


「恭弥さん!」
今日は恭弥さんがデスクワークだって聞いて、嬉しくて走って飛びついた。



「卑怯です、恭弥さん。どんなマジック使ったんですか」
目の前でお父様が頬を膨らませて言った。

お母様が言うには、お父様はものすごい親ばか、らしい。


恭弥さんがデスクワークをしている間、あたしはその膝の上に乗っていた。
随分前に周りでチョコチョコ走ってたあたしを抱き上げて乗せてくれたのがきっかけ。
邪魔にならない?って聞いたけど、周りにいるほうが邪魔って言って笑ってくれた。


そこから、ここはあたしの特等席。



「マジックって、何もした覚えはないよ」
「じゃあ、どうしてがそんなにも懐いてるんですかっ!」
俺だって膝乗せたいのにー!!とお父様が嘆いた。


「綱吉煩い。僕部屋で仕事するから」

「あ、はい。・・・ってまで連れて行かないでくださいー!!」
山彦みたいに何度も響く声を聴きながら、あたしと恭弥さんはお父様の執務室を出た。




「お父様叫んでたけど、恭弥さん仕事増やされない?」
「別に、増えても大丈夫だよ」


増えるんだ・・・。

後で、お父様にそんなことしないでって言っておこう。
恭弥さんの膝の中でそう思って、真剣に仕事をする恭弥さんを見上げた。

結構恐れられてるけど、実は恭弥さんにはファンクラブがあったりして、すごく格好いい人。
今は恋人はいないけど・・・・・・作ろうと思ったらすぐにでも作れるよね、きっと。



「・・・?」



ちょっと戸惑ってる恭弥さんの声が聞こえて、パっと顔を上げたら雫が飛んだ。

「何で泣いてるの?」


「・・・恭弥さん、お願いがあるの。あたし、頑張って大きくなるから、大きくなるまで恋人なんて作らないで」
ぎゅうって恭弥さんの白いシャツにしがみついた。


すごく暖かくて、優しくて、低い声がした。
「じゃあ、約束しようか?」

シャラリ、と音がしてヒンヤリとした感触が首にくっ付いた。

「約束?」

首にはチェーンが付いていて、その先には綺麗な銀色の指輪があった。



「そう、大きくなったら、結婚しようか」
恭弥さんの顔が近づいて、あたしの頬と唇に落ちた。


「うんっ!」




「・・・ごめんなさい、ツナさん・・・ハルにはツナさんに秘密が出来ました・・・」
増やされた雲雀さんの書類を持って、私は扉の隙間から中を覗いた。
ぎゅうって抱きしめあう二人がいて。

ちゃんの幸せのために、ハルはっ・・・!」
くっと私は拳を握った。









( 大きくなるまで、君が一人の女性なるまで、君がこの日の僕に追いつく日まで )