政宗さんは最初、女の人が苦手だった。

いや、そりゃ今はいけいけ攻め攻めな人だし、事あるごとにあたしを押し倒すし。
あ!今は違うみたいな言い方したけど、それはあたしだけだからね!ほかの人はまだ苦手なんだから!

・・・ともかく、政宗さんは最初あたしのことが苦手みたいだった。


そんな、あたしと政宗さんが夫婦になる前のお話。




「おはよーございます!政宗さん!」
「・・・おう」

とりあえず、あんまり目を合わせてくれることはない。というかごくまれだ。
軽く手をあげて(格好いいっ!)、去っていく政宗さんをじっと見つめてた。


「つーか、・・・俺は無視か」

「・・・ひぃっ!こ、こじゅろ、さん・・・。あは、あはは・・・無視だなんてそんな・・・ただ、あたしの目には政宗さんしか見えなくてっ!」
「それを無視っつーんだ、このボケっ!!」

ひぃ!あ、愛のスキンシップが痛い・・・。げんこつは痛いよ・・・。
ああっ!そんなことしてる間に政宗さんが遠くにっ!


「ま、ま、」

「ま?」
小十郎さんが首を傾げて怪訝そうな顔をしてるけど、気にしないで思いっきり息を吸った。


「政宗さん大好きぃいいいいいい!!」


あ、こけた。


「お・・・おい、てめぇ・・・」
「政宗さん愛してますぅううう!あいらぶゆぅううううう!!あいにーじゅぶへぁっ!!!」
「うるせぇっ!この屋敷壊す気かっ!!」
「政宗さんへの愛でなら屋敷くらい壊せる気ぐふぁ!!」

い、いた、痛い・・・痛いですって、小十郎さん・・・!
前方で政宗さんがきょとんとしてこっちを見ていて、あたしは政宗さんに大きく手を振った。

「政宗さーん!大好きですよぉ!」
「だからうるせぇってんだろっ!」
「もー!人の日課を邪魔しないでくださいよ、うるさいのは小十郎さんですよ」

てめぇ・・・とプルプル震えてる小十郎さんを無視して、政宗さんに笑って手を振り続けた。

「政宗さん、大好きですー!愛してますー!あいらーびゅー!あいにーじゅー!あいうぉんちゅうううう!!!!」

いや、一番最後のが本音っていうか、うん、まぁそうなんですけどね。
でも政宗さんがあたしのこと苦手なのに無理しちゃダメだからね。


尚更きょとんとしてる政宗さんに、あたしは駆け寄らないでそのまま手を振る。
大きく大きく、政宗さんに見えるように。



「お仕事、頑張ってくださいねー!」


すると政宗さんがきょとんとしたまま数秒止まって、それから腹を抱えて笑いだした。
あれ?ここって政宗さんが感動して泣くシーンじゃ・・・(想像中)・・・ありえないか、それは。


!」

突然政宗さんのあたしを呼ぶ声が聞こえて、顔をあげるとニィ(ここニカじゃなくて、ニィっね!)と笑う政宗さんが居た。

「ま、まさむねさ、」

「Thank you」


・・・やばい、また惚れた。





何度だって惚れさせて



( あなたのその一瞬一瞬に、あたしは何度だって恋をしてしまうから )