「・・・んむ・・・」 息苦しさに目が覚めた。 何かと思えば体を拘束する二本の腕。 それはひどく整った体から生えた、それはそれは奇麗な腕で、そのてっぺんについている顔も、それはそれは奇麗だ。 入籍して2年になって、とっくに新婚なんて終わってしまったあたしの旦那さま。 老けない顔と、奇麗な肌は、やっぱりあの姫だなぁなんて納得してしまう。 というのも、あたしの旦那様である有定会長・・・もとい、有定修也は、男子校で女装をしていたのだ。 1年生の見目麗しい男の子の中から選定された人間が教育され、姫として舞台で歌を歌ったり、運動部の応援をしたりするのである。 つまりは女子高で言う王子様ってやつ。 しかも、たぶん今女装してもあたしより奇麗だと豪語できる。うん、絶対に。 だって女装してなくても修也は美女だから・・・(本人に行ったら絶対零度の笑みを返されるけど・・・) 「奇麗・・・眼福眼福」 毎日こんな奇麗なものを近くで見れるんだから、あたしって役得だよなぁ。 女として色気で負けちゃってるのはどうかと思うけど、そんなの鑑賞に徹してるからどうでもいいし。 むしろ、修也がきれいだとあたしも嬉しい。 っていうと、「はなんかずれてるね」って笑われた。 うーむ、おかしいのかな。 寝顔をじっと見る。 睫が長くて、今は目は閉じてるけど大きくて、眉も奇麗で髪もきれい。 すっと通った鼻筋と、形の良い唇が小さな顔に収まってて、それはそれは奇麗なものだと思う。 あたし素で星空が目の前にあって、修也に「綺麗な星空だね」って言われたら、「修也の方が綺麗だよ!」って言えると思う。 本気で。 本当に綺麗で、黙っているだけで美女に見えるのに(未だに男の人にナンパされるくらいに)、時々やけに男らしい。 というか、サド。サド。 昨日の夜みたいに、もうあたしが限界だっていうのに焦ら・・・もとい。 時々こんな平凡な人が妻とかって目で見られるけど、あたしは開き直っている。 だって、修也だけで十分きれいなんだから、平凡なものもないと飽きちゃうじゃない! それを言った時に、修也に大爆笑されたのは良い思い出だ。 「・・・ん」 色々考えてると、修也が身じろぎをしてあたしをぎゅっと抱きしめてきた。 結構修也って甘えたがりだよなぁ。 こうやって抱きしめたら朝もぐずぐずして中々離してくれないし。 ぎゅーってされて、ちょっと暑いけどあたしから離れようとは思わなかった。 だって修也の仕事っていつも忙しくて、あんまり時間ないし。 「修也・・・」 あたしからすり寄るように近寄ると、修也がさらにあたしを抱きしめた。 時間は・・・うん、大丈夫。 二度寝しても、きっとアラームが起こしてくれると信じよう。 ちょっとだけ体を上にずらして、修也の綺麗な顔にちゅっと口付けた。 それから、もそもそと元の位置に戻る。 たぶん、きっと。 「・・・おやすみ」 こういうのを幸せって言うんだろうな。 |