それは所謂政略結婚、という奴で。

愛情も恋慕もへったくれも何もない(っていうか、へったくれって何だっけ)結婚で。
まぁ、この世界では珍しいことじゃないか、とため息を吐いた。



、どうかした?」
旦那でありマフィア界最高峰・・・というか一番上のドン・ボンゴレ沢田綱吉が小首を傾げた。

「政略結婚の不条理さについて考えていました」

さらり、とついつい口走って、しまった!と思った。ああ、目の前で沢田綱吉が目見開いてるよ・・・。
結婚して数年、「どうかした?」って聞かれた後に、「いえ何でも」以外の返答をしたのは初めてだしなぁ。


「・・・それで?」
目を見開いた後、見上げた根性と言うべきか、沢田綱吉はにっこりと笑ってきた。

「親の繋がりや組織のための結婚ですし」
「うん」
確かにね、と沢田綱吉が頷いた。

「別にそれが嫌というわけでもなくて・・・むしろ、ドン・ボンゴレの妻になれたことは誇りだと思ってますし」

それに、万国ビックリショーみたいな面々も中々面白い(ちなみに、最強と謳われる二人組みも中々面白い(言わないけど))。
麻薬も厳重に取り締まってるし、必要以上の殺しはしないし、街の人間に慕われてるし、優しいし。
良いところに嫁いだなーと思う。


「綱吉さんに捨てられない限りは隣にたって、綱吉さんの子どもを産んで、その子どもが十一代目になるんだろうなーとは思ってます」
綱吉さんは愛人を作らないから、多分捨てられない限りはあたしが沢田綱吉の子どもを産むんだろう。


「で、そこまで受け入れてるのに、どうしては政略結婚の不条理さについて考えてたの?」

ニコっと笑う。部下の面々に怒るときの笑みとは違う、普通の柔らかい笑み。
この人が大空って言われる理由が分かるなぁって笑み(あれ、わけがわかんなくなってきた)。



「だって、綱吉さんはあたしを愛しているわけじゃないでしょ?」


あ、ちょっと本当の口調になっちゃった。
さらりと言うと、沢田綱吉が困ったように笑った。口調については気にして無いみたい。


「あー・・・言いにくいこと言うね」
「好きの部類に入るんだと思いますよ、綱吉さんにとってあたしは。だけど、愛じゃないでしょ?」

まぁ、政略結婚なんてそんなもんだし。
多分沢田綱吉にとってあたしは、護るべき存在だろうし、傍に置いておく存在だろうし、好意的相手なんだと思う。

恋愛感情は置いといて。



「・・・ごめん、。否定できない」

「お気になさらずに」
今度はあたしがにっこりと笑った。


「それでもね、綱吉さんはあたしを抱かなくちゃいけないし、あたしにキスしなきゃいけないし、あたしに愛を囁かなくちゃいけないんですよ」

大変ですね、政略結婚って。



「だから、打開策があるんです」
「え?」
きょとんとあたしを見てくる沢田綱吉に、にっこり・・・いや、にやりと笑った。


「あたし、二日前から綱吉さんに恋をしたんです。全力で落とすので、よろしくお願いしますね」

「は?」

政略結婚から始まる愛だってありでしょう?



「さぁ、綱吉さん」





恋から始めましょうか



( 順番?そんなセオリーなんて、くだらない )