「、久しぶりー!」 「うん、久しぶり」 久しぶりにあう同級生だった子ににっこりと笑顔を向けて手を振る。 桜上水の同窓会は、思った通り人数はかなり多いらしい。 だって、今じゃプロのサッカー選手である水野君とか風祭君とかがいるもんねぇ・・・。 その女の子たちの目的というか本命である水野君は、サッカー部の子たちと話をしているみたいだけど。 ぎゃいぎゃいと、まるで中学生のころに戻ったかのように騒ぐ彼らから少しだけ離れたところ。 決して混ざることはなく、だけど孤立しているわけでもない、そんな人物に向かってあたしは声をかけた。 「不破君」 ざわりと、騒いでいた声が一気に止んで、あたしに視線が集まる。 なんだなんだと好奇心の視線が突き刺さって、若干何とも言えない。 そりゃ、あたしは目立つタイプじゃなかったし、不破君とはいかにも関わらなさそうな人物だし。 いうなれば、珍しい取り合わせ・・・いや、有り得ない取り合わせ、なのである。 そんな視線をモノともせず、不破君が立ちあがってこちらに少し近づいてくる。 「なんだ、」 「赤ちゃんができたんだけど」 ぴたり、と。 まるで周りの時がとまったみたいに、誰ひとりが微動だにしなくなった。 「・・・誰のだ?」 「あたしと不破君との子どもに決まってるじゃない。心当たりがないなんて言ったらぶっ飛ばすよ?」 「誰も心当たりがないとは言っていない。そうか・・・じゃあ、結婚をするか」 さらり、と今プロポーズされたけど・・・まぁ、ここで言いだしたあたしにも問題はあるか。 「そうね。じゃあこの婚約届けに記入して」 「分かった」 もうあたしの分だけ記入済みの用紙に、不破君が迷いなく記入していく。 この辺の思い切り具合ってすごいなぁ・・・。 「記入出来たぞ」 「・・・何で印鑑を持ち歩いてるのかは知らないけど、まぁいいか・・・。じゃあ、同窓会終わったら市役所行こうか」 「ああ」 うん、これでよし。 と、事態を終結させようとしたあたしに向かって、まるでこの固まった空気を破るかのような声が響いた。 「―――って、違うだろぉお!!!」 おお、水野君、相変わらずツッコミはバッチリだね。 「ん?どうした、水野。何か記入間違いをしていたか?」 「そういう問題じゃ・・・!!ああもうっ!!」 頭を抱えてがっくりと項垂れる水野君に、不破君は不思議そうな顔をしていた。 そんな水野君をフォローするかのように佐藤・・・いや、今は藤村なんだっけ?分かりづらいから佐藤君でいいや、が、口を開く。 「タツボンがいいたいのは、二人ともいつから付き合っとったんねん、っつーこっちゃ」 「・・・付き合う?」 不破君がきょとんとして言った言葉に、佐藤君がまた不可思議な顔をする。 ああ、違う違う。 「佐藤君、そうじゃないのよ」 「へ?」 うん、まぁなんて言いますか。 「先月ばったりと会って、その時凄く不破君の子どもが産みたい衝動に駆られて、それを言ったら不破君が了承してくれて、そのままなだれ込んだだけだから」 ピシっと、今度こそ音を立てて周りが固まるのを見ながらあたしは不思議そうな顔をしている不破君に向かってにっこりと笑った。 うん、問題なし! 「そ、そっちの方が問題だろぉおおお!!!!」 最後に、水野君のとても素敵な姑ツッコミが響いたのを追記しておく。 |