「・・・あれ?どこかに出かけるの?」 ノックをして部屋に入ってきたアルが、きょとんと首を傾げた。 漸く体を取り戻したアルの表情は分かりやすくて、思わず笑みが浮かぶ。 「ああ、うん。ちょっとリゼンブールに行ってこようと思って」 「ふぅん・・・。あ、兄さんにはもう話してるの?」 そうアルに問われて、そう言えば聞いてなかった、と思い立つ。 「あはは・・・ま、まぁこれから言ってくるし」 「相変わらずだね・・・」 苦笑するアルに、思わず頬を掻いてごまかす。 昔っからよく勝手にどっか行っては怒られてたなぁ・・・。 「ただいまー」 「あ、丁度良かった。お帰りー」 さっきの話の中心人物であったエドの声がして、二人でドアから顔を出す。 「ん?ただいま。どうしたんだ?」 「うん、えっとね。ちょっとリゼンブールに行ってきたいんだけど」 近寄ってエドが脱いでる上着を受け取る。 エドも腕と足を取り戻してから、昔の豆粒と呼ばれてた頃の名残なんて感じさせないほど成長した。 ・・・まぁ、未だにロイさんとかには小さいとか言われてるけどね・・・。 「リゼンブール・・・?いいけど、何でまた」 釦を外しながらきょとんと首を傾げるエドに、あたしは上着を畳みながら口を開く。 「んーだって、ピナコさんとウィンリィに、とりあげてもらいたいし」 ぴたり、と釦を外していたエドと、後ろでコーヒーを入れていたアルの動きが止まる。 ・・・あれ? 「さん・・・つかぬことをお聞きしますが・・・」 「なんすか、エドさん」 さん付けって、気持ち悪いなぁ・・・。 「・・・何を、ピナコばっちゃんとウィンリィにとりあげてもらうって・・・?」 「何って。・・・赤ちゃんに決まってるでしょ?」 それ以外にとりあげるって言う? 「それを先に言えぇええええええええええええ!!!!!!」 「に、兄さん駄目だよ!怒鳴っちゃ!!赤ちゃんに悪影響が!!」 「はっ!!」 豪快に叫んだエドに、アルがおろおろとして止める。 まぁ、エドの叫び声なんて慣れてるから、多分がっつりあたしとエドの血をひいてる赤ん坊なら全然平気だとは思うけど。 「―――と、言うわけで、頑張れ。禁欲生活!」 「いや、赤ん坊出来たなら禁欲生活は当然としても・・・、ってそうじゃなくて!行くの早すぎだろっ!」 「そうだよ!お腹が目だってからでも十分なんじゃ・・・!」 くわっと目を見開いて叫ぶエドと、おろおろとしながらそう言うアルの顔を交互に見やる。 いや、まぁ二人の気持ちもよくわかるけどね。 あたしは叫ぶエドとおろおろするアルに向かって、にっこりとほほ笑んだ。 「この前楽しみにとっておいたプリンをエドに食べられたことを思い出してむかついたから、一人で行ってくる!」 ぐっと親指を立てると、エドが思いっきり叫んだ。 あほか、って失礼な。 |