今、あたしは二週間前に別れた彼氏を呼びだして待ってる真っ最中だったりする。 ・・・いや、別にこう食い下がってるとか、そういう状況じゃないのよ。 そりゃ未練はタラタラですけど。 だけど好きなだけじゃ想いは続かなくて、二週間前に彼氏である英士から、俺達離れようと言われた。 その二週間の間あたしは英士を忘れるためにサッカーの放送を見ないようにしたり、色々してたら疲れがたまったのか仕事場で倒れて病院に行ったら。 おめでとうございます!妊娠してますね! ってなんだそりゃ!! ああ確かにしたさ!避妊具なんてもんざつけなかったさ!! だけど、だけど、何で二週間前にわかんなかったのさ、馬鹿野郎っ!! そしたら英士も離れようなんて・・・・・・いや、それは言い訳、だよね。 今だってよりを戻そうっていうわけじゃない。 これは、ひとつの賭け。 もし英士が来るならぜーんぶ言って、英士とどうするか考えよう。 英士が来なければ、何も言わずに一人で産んで育てよう。 「・・・ごめん、遅れた?」 「・・・って、来たし・・・」 この場合賭けは勝ちなのかしら、負けなのかしら。 メールで、ちょっと話したいことがあるって場所と一緒に送っただけなのに、なんで来ちゃうんだろ。 しかも二週間前に別れたばっかりの女のところに。 「それで、。話って?」 「えっと・・・その・・・別にあの時隠してたとかそうじゃなくて、あたしも一週間前に知ったばっかりっていうか・・・なんていうか・・・」 「うん」 英士は催促することもせずに、ただじっとあたしの方を見てあたしが話出すのを待ってくれている。 別れた女にさ、そんなに優しかったら駄目だよ、英士。 「その・・・さ・・・」 ぐっと息をのみ込んだ。 っていうか、こういうことって別れた彼氏に言うものなのかな・・・。 でも、一人で育てるわ!なんて格好いいことなんて言えやしない。 「・・・妊娠、した・・・」 思わず俯いて、英士の顔を見るのが怖かった。 ああ、驚いてるんだろうな。 別れた彼女にこんなこと言われて、どうしようって困ってるんだろうなって思うと、なんだかすごく怖くて。 「あ、あの、英、」 「・・・なんだ。じゃあ、これやっぱり今日持ってきといてよかったんだ」 コトリ、と音がして思わず顔をあげたら、机の上には5cm四方の小さい箱が置いてあって・・・これは、あたしにも分かる。 指輪とかが入ってる箱、だ。 「え、英士・・・?こ、これって・・・」 「いつ渡そうかと思ってたら梓が妊娠したっていうから丁度よかったと思って」 いや、そうじゃなくてさ! 「だ、だって、何で別れた女に指輪なんて、」 「は?別れた?」 ・・・ん? きょとんと不思議そうな顔をしてる英士になんだか嫌な予感がしてきた。 「だって・・・俺達、離れようって」 「あの時はお互いイライラして冷静じゃなかったから、俺も丁度遠征で一週間くらい留守にするから、冷静になれるまでちょっと離れてようって言っただけだけど」 「ま・・・紛らわしい!!」 何それ!何それ! いや、っていうかつまりはそれって、あたしの一人相撲じゃない!! 「ほんと、馬鹿だね。は」 「え、英士のせいでしょ・・・!?」 そう反論するあたしに英士はにっと笑うだけで、それから机の上に置いてあるケースを開いて・・・やっぱり、そこには指輪があった。 「結婚、するでしょ?」 「う・・・。・・・はい・・・」 |