「・・・・・・」 「んげ」 そろり、と口からスプーンを離して、目の前に現れた人物にあたしは小さく唸った。 いや、兵助だってここの家の人間なんだし、突然帰ってきたって何の非もないんだけど。 「俺の豆腐ぅうううう!!!!!」 今まさに食べていたそれは、兵助の大好物でした。 「、ごめんなさいは!?」 「・・・ごめんなさい」 兵助に正座させられてあたしはじっと足のしびれに耐えながら何度めかの謝罪を言う。 っていうか、豆腐一個で大激怒とか、ほんと、豆腐小僧にもほどがある。 近くにスーパーだってあるっていうのに。 「また、お前はダイエット?それとも美肌だっけ?」 「そんなこともありましたね」 兵助の豆腐を食べたのはこれが初めてじゃなくて、実はダイエットだから、だの美肌がどうだので、食べてたことがある。 無断で。 「それよりも、あんまり豆腐好きじゃないだろ」 「あんまりね」 嫌いってわけじゃないけど。 なんか色が苦手。 「実はとある野望がありまして」 「野望?」 じんじんとふくらはぎがしびれてるのを感じる。 「せっかく兵助が豆腐小僧なんだから、親子そろって二代で豆腐小僧にしようと、今から教育中で」 「・・・・・・」 ただでさえ表情があんまり変わらない兵助の顔がゆっくりと疑問の顔に変って、それから驚いた顔になった。 「足!くずせ!」 「へ?あ、はい」 いいの?って足を延ばしたら、その膝の下とか背中とかにクッションがどんどん積まれていく。 ちょ、おも・・・! 「待ってろ」 そう言いだした兵助が突然冷蔵庫の方に歩いていって・・・。 「って、何で冷蔵庫の中全部の豆腐出してるの!?」 「ん」 それと、スプーンと醤油。 ・・・食えってか? 「兵助さん、栄養が偏ると思います」 「豆腐だから大丈夫」 「じゃねーよ」 |