「最近まためっきりと影が薄くなっていつか影が消えてしまうんじゃないかという懸念に毎日毎日かられているカズ君、おはよう」 「一言でさり気なくまたさらに影が薄くなるようなセリフをどうもありがとう!」 「いえいえ、どういたしまして」 「感謝してないっつーの!」 ああもう、ってカズ君が叫ぶけど、うん、そんなにキリキリしてたら影よりも頭が薄くなっちゃうよ。 ・・・そんなカズ君はちょっと見たくない・・・。 「で?どうしたんだよ、」 とカズ君が怪訝そうに聞く。 ・・・それが一応仮にも彼女に対する態度かね・・・。 「恋人に逢いに来る理由を聞くのは野暮だと思いますけど」 「・・・あ、ああ・・・そっか・・・」 そう言ってフイっと顔を逸らすのは、若干恥ずかしいかららしい。 っていうか、もう二十歳越えたのに、未だに純情だなぁ、カズ君。 「あたしはね、日々心配しているわけですよ。このまま影が薄くなり、頭皮が薄くなり、見るも無残な姿にカズ君は変貌をとげて行くんじゃないかって・・・」 「とげねぇって!!っつーか、それこそ恋人に対するセリフか!?」 流石に危機感を感じているのか、カズ君が怒鳴るけど、そこは右から左へ、ってやつだ。 カズ君は若干説教癖がついてきちゃったからなぁ・・・ツッコミ気質って言った方が正しいのかもしんないけど。 「恋人だから心配してるんでしょ。赤の他人だったら心配なんてしないし」 「お・・・お、おう?」 なんか腑に落ちないけど納得します、みたいな顔をするカズ君に、うんよしっとあたしは笑顔を向けた。 カズ君はスパスパっと断言されると、意外と冷静な判断が出来なくなっちゃうんだよね。 そこをうまくつけば色々と・・・うん・・・ねぇ? それはさておき。 炎の王で一応A・T界では尊敬される存在であるはずなのに、空の王になっちゃったイッキ君とか、牙の王の咢・亜紀人君とか・・・兎に角濃い面々が多いんだよね、カズ君の周りって。 まぁ、それが理由で付き合い始めたっていうのも若干あったりするから、それに文句は言えないんだけど。 流石に、影の薄くなりようには若干心配もあるし。 「それでね、あたしは真剣に考えたの」 「・・・俺の影が薄くなんない方法を・・・?」 そう尋ねてくるカズ君に、あたしは勿論と頷いた。 「そう。んでね、まず大切なのは、イッキ君にも咢君達にもないものを、カズ君が持つことが大切なの」 まぁ、速さとか、色々なものがあるわけだけど。 新しいものを投入してみるって重要だと思うんだ。 「・・・で、一体それって何だ?」 流石に気になったのか、じっとあたしを見てくるカズ君に、あたしは胸を張って言う。 「カズ君だけが、来年の春お父さんになるんだよ!」 どうだ! 「・・・・・・は?」 「まさか身に覚えがないとか言ったら、技かけるよ!」 「いや・・・そりゃ、身に覚えはあるけど・・・・・・え、マジ、で?」 呆然とあたしを見てくるカズ君に、母子手帳を取り出して見せる。 「マジで。大マジ」 にっと笑うと、カズ君の腕がにょっと伸びてきて、ぎゅって抱きしめられた。 「・・・さんきゅー・・・マジで、嬉しい」 「うむ。あたしに痺れて憧れたまえ」 「いや、なんでだよ」 ズビシ、とカズ君のツッコミが見事に入った。 |