「骸、骸!あたしの愛しい骸!聞いてちょうだい!」 「誰が誰の愛しい人ですか。残念ですが僕は戯言に貸す耳は持ち合わせていませんね」 スパっと骸は手元の雑誌から視線をそらさずに言う。 んもう、相変わらずツンデレなんだから! 「大丈夫。全部分かってるわ。そんなこといいながらしっかりあたしの話をちゃんと聞いていてくれてるものね」 「妄想しすぎで頭がおかしくなったんじゃないですか?。一体僕のどこが君の話をちゃんと聞いていると?」 「骸ってば本当に照れ屋さんね!」 「君の会話の意図がつかめない!」 うんうん、相変わらず骸は可愛いわ。 そして二人っきりと周りに人がいるときのこれだけの温度差があるのが本当にいいわよね。 ギャップ萌えってやつ? 「で、君は一体何の用なんですか?さっさと用事を済ませてください。態々君が嫌いな車に乗ってまでここに来るほどの用なんですから、くだらないこと言うと巡り堕としますよ?」 よくもこれだけの言葉を早口でノンブレスで言いきれるもんだよなぁ・・・。 デレ状態でもツン状態でも本当に面白い人よね、骸って。 「ああ、うん。赤ちゃんが出来たみたいで。それで骸に報告に」 そのために運転嫌いで車嫌いだけど、時間がもったいなくて来ちゃった。 「き・・・」 「き?」 ばさり、と雑誌の落ちる音がした。 「君は馬鹿かっ!!く、車なんかに乗って事故にでもあったらどうするつもりだ!!それよりも何故この時期にそんなうすら寒い格好をしているんですか!」 「え?いや、一応あたしちゃんと免許持ってるし、薄ら寒いって、中もこもこだけど?」 「君にもしものことがあったらどうするんですか!」 ・・・骸、ところどころにデレモードが発動してるけど、いいのかしら。 あたしは楽しいからそれでいいんだけど。 「あはは、大丈夫よ。六道骸の子どもだもの」 「それは一体どんな根拠で!?」 「大丈夫、だいじょ、あ・・・」 つるり、とツルツルの床に足が滑って、そんなあたしを見事骸ががっちりと支えてくれた。 「骸、ナーイスキャッチ!」 「何がナーイスキャッチですか!全くだから君から目が離せないんですよ!」 「わぁ、熱烈な告白ぅ。聞いたー?パパったらあたしから目が離せないんだってー」 「だからっ・・・!!ああもう・・・!!」 あたしをぎゅっと抱きかかえたまま器用に頭を抱える骸を見つめながら、あたしはいつ立たせるか座らせてもらえるのかしら、と思っていた。 骸になら一生ぎゅってされててもいいんだけどね。 |