小さい頃のあたしって、やんちゃばっかりだったと思う。 思い返せば京都まで家出するわ高校に忍び込むわ。 「でも可愛かったでしょ?あたし」 鵺の顔を見ながらにっこりと笑ってやる。 そんなあたしに、しっかり男の人として成長しちゃった鵺は、だけど変わらない表情で困ったように言った。 「何で自信満々なんだよ・・・」 「可愛くなかったんだ」 「今も可愛いんだよ、馬鹿!」 訂正してくれた鵺に、思わず胸がきゅんってする。 ああ、あたしのあの片思いの日々も無駄じゃなかったんだよね! 両想いになった後も義務教育がうんたらかんたら、って煮え切らない鵺を襲ってよかった! 「それにしても、皆どんどん独立し始めてさみしくなってきたよね」 ショウもコウ君もナナちゃんも皆どんどん大人になっていって、今じゃ顔は出してくれるけどずいぶんと逢わなくなってしまった。 嬉しいやら悲しいやらって感じだけど。 「まぁ、あいつらもそれぞれ歩く道もあるしな。仕方がねぇよ」 「でもさぁ・・・やっぱり、増やしたいよねぇ・・・」 そう言うと、鵺がケラケラと笑いだした。 「ここをただの孤児院にでもするつもりかよ」 「えぇ?いいじゃん。もうあんなしがらみはないんだし」 でしょ?と言ったら、鵺がそうだけどよ、と短く返してくれた。 「・・・で、どうせのことだから目星でも付けてあるんだろ?」 「うん、来年の春には」 「は?」 鵺がきょとんとあたしを見る。 来年の春、なんて言い出してこんな遠い話をし始めたあたしに不思議そうな顔を向けた。 いや、だってこれで間違ってないんだもん。 「春って、遠くね?」 「春でいいんだよ。来年の」 「何でだよ」 不思議そうな顔で見返してくる鵺に、あたしはにんまりと笑った。 「だって、じゃないとまだ豆粒よりも小さいんだもん」 「・・・は?」 更に不思議そうな、でももしかして、なんて期待のある目に、あたしは肯定するようににっこりと笑った。 ね、名前はどうする?パパ。 「赤ちゃんが出来ちゃった」 |