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「恭弥ぁああああ!!!」 「・・・朝っぱらからうるさいんだけど、」 スパーンとふすまを開けてみれば、そこには着崩れした寝巻ようの浴衣?に身を包んだ恭弥がいて、多分恭弥のファンなら倒れてしまいそうなフェロモンがばんばん出てるんだと思う。 でも、あたしはてっちゃん一筋だからね! 「今日という今日は決着をつけなくちゃいけないわ!」 「はいはい。好きにすれば」 「あたしとてっちゃんとの愛の間には、誰にも入れないってことをその体に刻みこんであげるわ!」 びしっと人差し指を向けてあくびをしている恭弥に向ける。 と、その瞬間。 「ーーー!!」 とてっちゃんの素敵な声がして、あたしは振り返った。 「てっちゃん!貴方の愛しいはここでーす!!」 「毎朝毎朝恭さんに奇襲をかけるなと言ってるだろう!」 「奇襲じゃなくて、勝負よ、勝負!愛しいてっちゃんの全てをゲットするためにも、あたしはライバルである恭弥と決着をつけなくちゃいけないんだから!」 「だから、僕はライバルじゃないから」 「しゃーーらーーっぷ!!」 何かあればすぐ哲、って言うくせに、全然説得力がないのよ!全く。 「兎に角、もう毎度のことだからあれだが、恭さんの迷惑になるだろう」 「む・・・。相変わらずてっちゃんは恭弥の味方なんだから・・・!!」 悔しい! ・・・って、二度寝しようとしないでよ、恭弥! 寝ようとした恭弥を揺さぶって起こして、てっちゃんに掴まれて離された。 うむむ・・・。 相変わらずてっちゃんは恭弥の味方で、いつもあたしは一人で孤軍奮闘だけど。 でも今日からは違うんだから! 「ふふん、てっちゃんを味方につけていい気になってるのも今のうちよ!恭弥!」 「別に全然いい気にはなってないけどね」 「なんといっても、あたしには今日から絶大な味方がいるんだから」 胸を張ると、恭弥がくぁっとあくびをした。 うぅ、てっちゃんに愛されてるからって、むかつくなぁ、もう! 「ほら、ごらんなさい!!」 某ご老人の印籠みたいに、あたしは小さな手帳をずばっと突き付ける。 と、きょとんとした二人の顔がそのまま固まった。 「こ、こここ、これ・・・は・・・っ!!」 「・・・母子、手帳?」 ふふん、ごらんなさい。 ぱさり、と音がして母子手帳に挟んでおいたエコー写真が落ちた。 あら、いけない。 「か、かかか、かがむなっ!!あああ、安静にしろっ!」 「やだてっちゃんったら、まだお腹も膨らんでないのに」 「そういえば、僕の部屋まで走ってきてたよね」 「え?うん」 「何をしているんだーーーー!!!!」 てっちゃんに思いっきり大絶叫で怒られたのに、何故か今回は恭弥は「哲、うるさい」とは言ってくれませんでした。まる。 |