「本当、お久し振りですね、スピさん」


「うん、そうだねぇ」
あはは、とスピさんが笑った。



「・・・で、何であたしはまた拉致られてるんですか・・・?」

「んー内緒」
クスっとスピさんが人差し指を口に当てて笑った(そう、そうなの・・・いつだって叶わない・・・ふふ)。

。現在拉致道一直線。


「ってそんなの嫌だぁああああああ!!!!!!」

あ、なんか・・・フラッシュバックした。




「イネせんせっ・・・!」
やっぱりあの時と同じように、ついたのはトゥール・トゥの本部でした。
うん、本当、普通につれてきてくれればよかったのに。


イネ先生は相変わらずムッチンプリンで、妖艶に足を組んだ。
「ほら、そんな顔をしないのよ、。折角なのに」
「折角?」
首をかしげたけど、イネ先生はうふふと笑うだけで、答えてくれなかった。


折角って何っ!?
、16超えて早幾年ですが、未だに年齢不詳のイネ先生とスピさんにはかないません。

いや、もう、むしろこの二人に叶う人なんているのかなぁ・・・。




「てめっ!そこ抜けるから掴むなっつってんだろっ!!」

突然叫び声が聞こえて、入口の方を見ると、そこには鵺と、鵺の触角・・・もとい、アホ毛を持つ咢君が居た。

「ファック!うるせぇんだよ。・・・ち、これでいいかよ」
咢君は凄く眉間に皺を寄せて溜息を吐いた。
それから、あたしを見て、一つ頷いた(何、何なんだ一体)。


「ええ、上出来よ。お礼に後で無料で診てあげるわ」
スミからスミまでね、とクスリと妖艶に笑うイネ先生に、咢君が嫌そうに顔を歪めた。




「で、一体何なんですか」
鵺の調律なら二日前にしたし、調律の手伝いなら鵺が呼ばれる理由も無いし。
というか、スピさんに攫われる必要は無かったような気がする。


「おめでとう、妊娠一ヶ月よ」
にっこりと、イネ先生が笑った。



に、ん、し、ん、い、っ、か、げ、つ・・・・・・・・・・・?



「・・・・・・はぁああああああ!?ぬぉああああ!?」
バっと隣の鵺を見ると、やっぱりか・・・と鵺が呟いた(やっぱりかって、おまえっ!)。



「いやー・・・ちょっと狙ってたから」
「ねらっ!?ちょ、は、えぇえええ!?」
よし、落ち着け。落ち着こう。うんうん。

妊娠、妊娠かぁ・・・いや、うん、別に鵺とは恋人だし、おかしいことじゃない、ような気もしてきたぞ、うん。



・・・・あっ!


「エっちゃんとかコウちゃんたちに、鵺をくださいって言わなくちゃ!」

「それ、俺のセリフだから」


逆逆、と鵺が笑いながら言った。








( いやいや、だからさぁ、逆なんだって言ってんだろ?しかもお嬢さんじゃねぇし )