「鵺様ー、今日はビーフシチューですよ!」 「その後ろ手に隠してる薬だせ、こら」 香るいい匂いと食欲をそそるような色合いにゆげ。まさに完璧ともいえるような料理・・・が持っていなければ。 その後ろ手に隠している薬を目ざとく見つけて、鵺の眉間に皺が寄った。 「これは関係ないんですよ、ひとっつも」 「惚れ薬か痺れ薬か眠り薬か?」 チラリと玉璽を確認している鵺に、は首がちぎれそうなほどにブンブンと横に振った。 「本当に今回は違うんです!シムカ様に頂いたんですけど・・・今回はさすがに危険かなーって」 うふふ、あはは。 目を逸らすに、鵺が訝しげに首を傾げる。 「何の薬なんだよ」 「・・・その、それがですね・・・。性転換の薬らしくて」 「は?」 時が止まった気がした(決してアイオーンではないのだが)。 今回は本当にシャレにならない代物だ(にその分別が出来て本当に良かったと、鵺は深く感謝した)。 「そのですね、今日も鵺様への愛のためにビーフシチューを作りながら、新作の惚れ薬にしようかな、痺れ薬がいいかな、ああもう眠り薬にして眠ってる間に襲っちゃ「で?」・・・えっとですね、そんな時にシムカ様が来たんですよ」 それでコレを貰ったんです、とはその薬を取り出した。 「貰ったんだけどいるーって言われまして、そりゃあ薬フェチなのでついつい受け取っちゃいました☆」 「受け取ってんじゃねぇよ!」 アホか、阿呆!!ベシっと鵺はの頭を叩いた。 「――と、言うわけで鵺様、ご使用なさいます?」 ふわりと優しい笑みで笑うに、鵺は悪魔のような顔になって一喝。 「絶対に使うか、ボケ!!」 「ボケって酷いですよ鵺様!使わなくちゃ展開ってものが成り立たないんですよ!!」 「ボケはボケだろ!っつーかそんな舞台裏ポロっと言うんじゃねぇよ!・・・つーか、俺が女になってどうすんだよ・・・」 はぁ、と鵺は溜息を漏らした。 「や、別にですね、鵺様が女の子になって私が男の子になれば襲いやすいなーって思っちゃったりしたんですけど」 「お前の頭はそればっかりか!」 「当たり前じゃないですか!頭の中は鵺様オンリーですよ!・・・でも私が男の子になると、強姦になっちゃうんですよねー」 それが残念・・・。 下を向いたに鵺は、逆でも強姦は強姦だっつーの、とそっと思った(思うだけに留めておいた)。 「いーからそんなもんは捨てて来い!この世のためにもならんわ!」 「えぇ!?じゃあせめて鵺様が女の子になって一緒にお風呂に入るくらい!」 「も一緒に捨てるぞ!?」 ガミガミと怒られるはとうとう観念してその薬は葬り去られた。 「・・・いやー、本当にそうだったね」 ニコリとスピットが笑った。 視線の先には結局一緒にビーフシチューを食べている二人がいて、ほほえましさよりも面白さに笑いが止まらない。 「でしょ?鵺君とちゃんは何を使ってもバカップルにしか聞こえないって」 えへへーとそのスピットの隣で笑うのは今回の騒動の張本人であるシムカ。 「なんであんなにベタ甘カップルなのに気付かないのかなー」 さて、もう一刺激与えてきますか!と立ち上がったシムカをスピットは笑顔で見送った。 ここであの二人のやりとりは、ある意味名物となっているのは、本人の預かり知らぬところである。 |