「ただいま」


明るく電気のついた扉を開く。
ふわり、と漂ういい匂いに顔を上げて、靴を脱いだ。
パタパタと、向こうの方から足音が聞こえて――――。



鵺は思いっきり顔を顰めた。


「おかえりなさーい、鵺様っ!ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ」
「それ以上言ったら殴る」

フリフリの白いエプロンを着けて、お玉を持って可愛らしく小走りしてきたに、鵺は低い声で、静止をかけた。


「鵺様酷い!新婚さんなら一度は言いたいセリフを言わせてくれてもいいじゃないですかっ!」
「結婚して三年目は新婚とは言わねぇ・・・あと、そのセリフは聞き飽きた」
ゴス、と一発の頭に拳を落としてから、鵺は一つ一つ突っ込んだ。
その拳は、些か痛みがあるものの、昔に比べれば、随分と優しい。

「えー・・・?でも、鵺様。いつでもオールウェイズ新婚気分は大切ですよ?それが夫婦長持ちの秘訣ですから」
常に鵺様とはラブラブでいたいじゃないですか。

そう呟くの左手の薬指に光る、銀色の指輪。
それの対になるものが、鵺の左手の薬指で光っている。


「あっそ・・・で、今日の晩メシは?」
「みそ煮込みうどん+αですよー」
「・・・+αって何だ、おい・・・」
秘密ですよ〜さぁ、夕食へれっつごー!と叫んで鵺の腕を引っ張るに、少しだけ苦笑して。


それからリビングへと歩き出した。




「・・・そういえば、3年ずっと思ってたんだが」
「はい?」
「何でお前、『鵺様』なんだよ」
「鵺様は鵺様じゃないですか〜?あ、それともなんですか?鵺たんとか、鵺きゅんとか、いっそのことダーリンとか・・・ハニーとか!?「一回、地獄を見てくるか?」ごめんなさい・・・・」

鵺の辛辣な言葉に、青ざめてからも、考えて。

「うーん・・・癖じゃないですかね。意外とSっ気のある鵺様に、服従しつつも、実は下克上狙いてぇなぁ・・・とかって思ってるわけではないですよ、うん」
「思ってんのかよ」

冗談ですって、冗談〜。

青筋を立てる鵺に、ケラケラと笑って、もう一度口を開いた。


「ベットの中では、『鵺』って呼んでるんですから、いいじゃないですか!」
「なんつー会話してんだ、馬鹿!」


もう一回、今度は強めに頭に拳を落とした。

「い、いたっ!痛いですって、鵺様・・・。まぁ、それよりも、ご飯にしましょう・・・」
そう言って、はみそ煮込みうどん+αを取り出した。
「おう・・・いただきます」
「いただきまーす」

一口、鵺がそれを口にして、固まった。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで、痺れ薬が入ってんだ・・・」
ひょっとしても、しなくても、+αってこれかっ!?



「ち、バレたか・・・。いっつもあたしがやられる側なんですから、今回くらいやられてくださいよ!むしろあたしは何時だって、鵺様を襲いたいんですよ!さぁ、動けなくなった今がChance!レッツインベットーーー!!!」

「だぁあああああ!待てーーーーーー!!!!」





何度 だって、 して さないで!



( それは響けば、愛のメロディになっていくんだ )