「武ー」 「どした?」 ボンヤリと綱吉たちの後ろについていく武の隣であたしは呟いた。 そうしたら武は律儀にも反応してくれて、人の良い笑みを浮かべて首を傾げた。 「平和だなぁっと思って」 ほら、ずっと色々あったじゃん。 そう言うと、武もそうだよな、と頷いた。 「平和だな」 呟いた武に、うんと頷いた。 目の前じゃハルと隼人の綱吉の取り合いが始まってた。 元気だなぁ、3人とも。 「聞きたいことがあったんだけど」 「何だ?」 また呟けば、武はまた律儀に答えて首を傾げた。 武には何だか人を和ませるオーラが出てるんだと思う。 「綱吉についてくの?」 ふと、武が固まった。 足だけは綱吉たちを追っていて、静かになった。 「ああ」 ゆっくり、ひとつ頷いた。 別に驚いたりはしなかった。 そうなんだなぁって思っただけで、別に泣き出したりとか、そんなことは無かった。 「もつれてくけどな」 なんとなく、この言葉を分かってた気がした。 「連れて行ってくれなくても、ついていくけどね」 武が傍にいないのに、生きていく意味なんてないじゃない。 なんて格好いいこというだけの恋愛なんてしてないけど、でもただ単純に一緒にいないといやなんだ。 武もそう思ってたみたいで、ニカっと笑った。 格好いい恋愛なんてしなくてもいい、たどたどしい恋愛こそがあたしと武の恋愛だ。 「つれていってね」 「約束する」 ん、といって差し出してくれた手に、あたしは手を重ねた。 前方では結局綱吉に宥められたのか、楽しそうに会話する3人の姿があった。 大分、喧嘩しなくなっちゃったなぁ、あの二人。 「ねー、武」 「ん?」 また呟いたあたしの言葉に、武は律儀に反応する。 「ちゅーしようか」 「そうだなー」 そう言って足がピタリと止まって、武の顔がそのままあたしの顔にくっついた。 (あ、ここ土手だった) |