「は、はは、隼人・・・」 思わず受話器を持つ手が震えて、あたしは震えた声になってしまった。 そうしたら向こうから隼人の声が聞こえた(やばい、機械越しなのに耳に近いって、もう・・・っ!)。 『何どもってんだよ、馬鹿』 少し声が笑っていて、あたしはぐっと唾を飲み込んだ。ちくしょう、遊んでやがるこいつ。 「別にどもってなんかないよっ!・・・そ、それよりも、留守電、聞いたよ」 最後は小さくなってしまって、聞こえたかどうか不安になったけど、どうやら隼人の耳にはしっかりと届いていたらしい。 クツクツと喉の置くで笑う声が聞こえたから、思わず受話器から耳を離した(鳥肌たつ!嫌な意味じゃなくて)。 『そういえば、最近どうなんだよ』 といわれたから、あたしは最近・・・と天を仰いだ。 「別に変わったことなんて無いよ」 隼人がイタリアに行ってしまった日から、隼人が居ないこと以外何も変わったことなんてないよ。 むしろ隼人が居ないから何かが変わってしまったとしてもどうでもいいことになってしまったんだけれど。 『ふーん。なぁ、俺が居なくて寂しい?』 何を言わせたいんだ、こいつ! 絶対受話器の向こうで笑ってるな、なんて思ったけど、あたしは頷くしかなかった(だってそれが本心だ)。 顔が見えないのだから素直になってやるのもいいかもしれない。 「さみしいよ。隼人が居なくて、さみしい」 思わず泣きそうになってたことは秘密。 『・・・そっか』 それからちょっと間があいて、すーっと空気が抜ける音がした。 人と電話する時くらいは煙草吸うのやめてよね!外で吸えって言ってるのに。 「隼人はさぁ、肺がんとかなってない?怪我してない?」 『普通それって怪我が先じゃねぇのかよ』 って言われたけど、隼人の場合肺がんの方が心配だ(そんじょそこらの怪我じゃ死ななさそうだし)。 「で、どう?肺がんとか病気とか怪我とか」 「別にねぇよ」 健康そのもの、ってのもどうかと思うけど。 隼人の言葉に、あたしはほっと安堵の溜息をはいた。 『なぁ、あの留守番電話なんだけど』 突然話が戻って、あたしの心臓はドクンと大きく鳴った。 思わず通話中の携帯を握り締めた。 「・・・うん」 『返事、聞いてもいいか?』 やけにらしくなく、しおらしく聞かれて、あたしは心臓が爆発してしまうかと思った。 まさか別の答えをあたしが言うなんて、思われているのだろうか(それはかなり心外だ!)。 「あの、あのね、隼人」 『・・・ああ』 あたしの言葉に、隼人が神妙になった(うわ、何か切り出しにくいなぁ)。 でもね、隼人。あたしは隼人のことが、隼人以外なら全部なくなっちゃったっていいくらいに、好き、だよ。 「行く。も、準備してあるから。すぐ行く」 今から空港行くところだったから、っていうと、突然チャイムも鳴らずにガチャガチャとドアが開いた。 (ま、さか、まさかまさかまさか――!) 「遅ぇよ」 |