置いていかれたのは突然で、いつのまにか一人になっていたベットの上に小さな手紙があって。 封筒にすら入ってないノートの切れ端のような手紙に書かれていた文字は、彼らしい不器用な文章。 その紙はもう冷たくて、部屋には温もりすら残っていなくて、あたしはその手紙を抱きしめて涙を流していた。 『さよなら』 一行目は短い四文字。 切り出しでもなんでもなくて、イキナリ本題。 「・・・っ、く、ん」 小さな声で呟いた。 『日本を出る』 今度は漢字を入れて5文字。 なんでこんなに文面はさっぱりしているんだろう。 哀しんでくれなかったのかなと思ったけど、近くにあったシャーペンが見るも無残に二つに割れていた。 『もう、戻れないかもしれないけど』 ちょっと長くなったその文章は、あんまりらしくない。 だって、気遣いなんて言葉知らないような人なのにな、なんて不覚にも笑ってしまった。 握りすぎてクシャクシャになった手紙を広げる。 『5年後に迎えにくるから』 今彼は高校3年生だから、5年後は23歳だ(ワオ!・・・って移っちゃった)。 まるで最初っから今日は来ていなかったみたいに部屋は何の匂いもしなかった。ただ、この手紙だけ、それだけが一つの繋がりみたいに。 『それまで、待っていなよ?』 手紙をぎゅっと抱きしめる。 こっちの言葉なんて聞かない気まぐれ勝手。 ぽたぽた涙が溢れて零れた。 「、ばりくんっ、ひばりくん、ひばり、くんっ!」 ちょっと高いマンションだから防音してあるから気にせずに泣いてしまえ。 待ってるよ、例えば雲雀君が待たなくていいって言っても、あたしはずっとずっと待っているよ。 雲雀くん、ひばり君、ひばりくんっ! 「ひばり君っ!」 待っているから、どうかあたしを迎えにきてね。 クシャリ、と手紙を握り締めた。 5年なんて早いものだ・・・なんていいたかったけど、本当はまだ2年しか経っていない。 だって、あたしがただ待っているだけの女だと思っているなら、それはお門違いという奴だ。 メールでよくやりとりしてるリボーンは雲雀君のことを、「最初は舐められてたが、今じゃ最強と言われ、下手な奴じゃ襲おうとなんて考えねぇな」といっていた。 雲雀君は変なところで頑固だから、5年経たなきゃ迎えに来ようなんてしないだろう。 だから、待ちきれなくてやってきたよ! 案内してくれるリボーンは、雲雀君を驚かせるためにわざと気配を出しているらしい(あたしの気配を消すためなんだって)。 ついたぞ、なんて小さく言われて見あげれば大きな扉(守護者とボスが会議をしている、らしい)。 「あいつらもこの時間じゃ、会議が終わって談笑している時間だろうからな」 といわれたけど、はっきり言って雲雀君が談笑している姿なんて思い浮かばない(むしろ奇跡に相当する!)けど、「ボスがつき合わせてるんだ」とリボーンが笑った。 ガチャリ、とリボーンがドアを開いた。 扉の向こうにいたのはあたしを見て眼を見開いた雲雀君。 「雲雀君っ!」 「?」 きょとんと目を見開く雲雀君にあたしは抱きついた。 |