「委員長シネバイイノニ」 ポツリと呟いた。 それはそれはそれはそれは約30cm前に居ようとも聞こえないようなそんな声だったはずだった。 なのに、この委員長馬鹿には集音機が耳についてるらしい(それも委員長関連のことしか聞こえないような)。 「何てことを言うんだ!」 バビュンと効果音が付きそうな勢いで飛び出してきたのは、哲矢だった。 「何って、片仮名で『し』と『ね』と『ば』と『い』と『い』と『の』と『に』を繋げて言っただけじゃん」 何が悪いの。 そう言うと、これまた委員長馬鹿な忠犬哲矢が喚きだした。 「繋げる言葉が悪いっ!」 「だから超小さい声で呟いたのに、あんたが勝手に聞き留めたんだよバーカ」 これだから委員長馬鹿は。 内心で毒気づいてやった。 「馬鹿とは何だ、馬鹿とは!!まだ話は終わってないぞ!」 「あ、委員長だ」 校門の方に、他のリーゼント引っさげて(うん、やっぱり哲矢が一番濃い顔だね)、学ラン肩にかけて歩いてくる雲雀に目を奪われてる間にあたしは歩き出した。 全く、哲矢は委員長委員長言い過ぎだと思う。 ちょっとは幼馴染のあたしというものを構ってくれてもいいんじゃないんだろうか。 生まれた病院から一緒でベットは隣でお家も隣でクラスも隣でジャストフィットなほどにお隣さんで。 うちの家族だって哲矢のあれだけ濃い顔を良い個性だよなっと笑って受け入れているのだから。 ちょっとは委員長ばっかりじゃなくって、あたしのほうを向けばいいのに。 あれ?これヤキモチか?あれ?あたし哲矢のこと好きだったの? どうやらあたしの頭は存外ガキっぽさよりも単純さの乙女回路思考が働いていたようだった。 そうとなれば話は単純だ。 「哲矢ぁーー!!」 丁度表情が見えるか見えないかの距離であたしが思いっきり叫ぶと、哲矢と一緒に雲雀のコッチを向いた。 「何だー!!!」 哲矢がこっちに届くように大声を出した(うん、声は聞こえてるみたいだ)。 「うるさいよ、草壁」 「は!すみません、委員長!」 ギラリと鋭い雲雀の目つきがあたしの方も見たけど、あれだけ濃い顔と一緒にいたあたしに怖いものは無い。 「副委員長なんて辞めちまえよーー!!」 「阿呆かお前はぁああ!!!」 やめるわけ無いだろう、と言わんばかりに哲矢が叫んだ。 うん、なんとなくそうだろうなぁとは思ってたんだよ、というかむしろ確定だからさ。 「18歳になったら結婚指輪もって迎えに来たら許してあげるーーー!!!」 哲矢がキョトンとした顔をしている間に(あ、雲雀もキョトンとしてる、すっげぇレア)、あたしはじゃーねと手を振って歩き出した。 今のうちに副委員長として青春を謳歌するがよいよ、草壁哲矢。 そのかわり、君の未来は先約済みだ。 「・・・・・・・・はっ!?い、委員長!ひょっとして俺は今ぎゃ、ぎゃ、」 「逆プロポーズだね」 わたわたと慌てる哲矢に、恭弥はさらりと答えを返した。 もちろん、その後学校中に響き渡るのではないかという叫びをした哲矢に恭弥の制裁が入ったのは言うまでも無い。 |