「君にプレゼントですよ」 そう言って通されて、目の前に広がったのは一面の青い薔薇だった。 うわ、悪趣味。 「骸さん、骸さん・・・」 「なんですか?」 にこやか笑顔はいいから、ものすごく格好良いけどいいから、とりあえず。 「ここあたしの部屋ですよね」 ベットですら青い薔薇に埋もれちゃってますけど。間違いなくここはあたしの部屋ですよね? そう言うと、肩を抱いている骸さんが当然のように言った。 「ええもちろん」 な ぐ っ て や ろ う か 。 「馬鹿じゃないですか、人の部屋こんな薔薇一色にしてくれやがりまして!」 「おやおや、怒ると体に悪いですよ」 クハっと笑うけど、笑い事じゃないんだっつーの、この馬鹿骸さんめ。 とりあえず人の部屋青の薔薇で埋め尽くすという神経が計り知れない(これで薔薇の花束とかだったらときめくのに)。 こんな一面に薔薇の花なんて、あたしが寝るとき困るじゃないですか。 「いいからこれさっさと撤去!あたしが寝れないじゃないですか!」 「それなら僕の部屋で寝ればいいでしょう?」 それなら何にも困りませんよとかっていうから、また殴ってやろうかと思った(しかも確かにとかって納得しかけた自分も殴りたかった)。 というか、もうあたしの部屋の痕跡は一切見当たらないくらいに真っ青な薔薇だらけ。 「さっさと撤去してください」 じゃないと、一ヶ月間骸さんのことパイナッポーって呼びます。 「・・・仕方がありませんね。別にいいですよ、幻術ですし」 よっぽどパイナポーって呼ばれたくないらしい骸さんは、あっさりとその青い薔薇を消した。 そうしてやっと、質素だけど快適なあたしの部屋に元通りになった。 うんうん、これで良し。 「本物の青の薔薇で埋めてみればよかったですね」 クフっと骸さんが笑うけど、そんなことしたら。 「一生骸さんのことパイナポーって呼びます」 「冗談です」 即答だった(そんなにもいやなんだ、パイナポー・・・) 肩を抱いてるのはあたしが嫌じゃないから(というかそこで恥ずかしかったり嫌になるような関係でもないんだけど)放置しておくとして。 一つも薔薇のなくなった部屋を見て、あたしはうんうんと頷いた。 あんな薔薇の部屋になってもらっちゃ困るから。 「別に、本当に僕の部屋で寝ればいい話なんですけどね」 「まぁ、それはそうなんですけど・・・」 結局いつも骸さんの部屋にいてこっちの部屋は使ってないんだけど。 なんか違うんだって(その辺は意外と分かってない人だからなぁ・・・この人)。 「そうなんですか?」 「そうなんです」 女の子って微妙なんですよ、骸さん。 そう言うと骸さんはちょっと不思議そうに首をかしげていた(くそ、こういうときに可愛いな、この人)。 それよりも――。 「というか骸さん、プレゼントは嬉しいんですけど、なんでまた青の薔薇なんですか」 あと部屋全部を埋め尽くすのは心臓に悪いんですけど。 そう言うと、骸さんはこともなさげに言った。 「は僕の目が好きなんでしょう?」 クフフっと骸さんが笑った。あー・・・そういえばそんなこと言ったような気がする。 「ならなんで青薔薇なんですか」 「僕の目を薔薇のようだといったじゃないですか」 ・・・ひょっとして、この人。 青い方しか好かれるものじゃないって思ってるの? 「・・・いや、たしかに青の眼の方も好きですけど、薔薇みたいだって言ったのは赤い目の方なんですけど」 六道の目のほうですよ、というと骸さんが眉を寄せた。 あんまり好きっていってほしくないのかもしれない(だから、はっきりと指さないと青だと思うの?)。 「随分と、悪趣味ですね」 「今更ですか?」 骸さんと恋人しちゃってる時点で悪趣味なんてものじゃありません。 そう言うと骸さんはきょとんとして、またクフクフと笑い出した。 「兎に角、青の薔薇なんていりませんって。別に赤の薔薇が欲しいわけでもないんですけど」 「おや、違うんですか?」 こいつ、実は絶対分かってるでしょ・・・。 「ああもう、赤の薔薇があたしの気持ちってわけですよ!」 「おやおや、随分積極的ですね」 ほら、わかってやがった! 「ああもう、好きですよ!大好きですよ!」 これで満足ですか!とあたしは堪えきれずにさけんだ。 |