「了平はね、お馬鹿さんで忘れんぼで猪突猛進でとっても可愛いのよ」 素敵でしょう?可愛いでしょう?欲しい?欲しいでしょ?絶対にあげないけど。 うふふふふ、と楽しそうに笑うあたしに、綱吉は大きく溜息を吐いた。 「先輩、ここは2年の教室なんですけど」 「ええ、もちろんわかっていてよ?我等が10代目の教室だということは十分承知していますもの」 それとも、ここが3年の教室に見えるの? 首を傾げるあたしに、綱吉はまた大きな溜息を吐いた。 まぁ、人の顔みて溜息吐くなんて失礼ね。 「本当了平ってば可愛いお馬鹿さんなの。恋人は必ずおはようのキスとまた明日のキスをするのよって言ったら、ちゃんと毎日してくれるのよ。ねぇ、素敵でしょう?隼人」 二つ返事でOKしてくれた了平を思い出して、あたしは恍惚の笑みを浮かべた。 隼人を振り返ると、隼人の顔は病気じゃないかってくらいに真っ赤だった。 ブニっとあたしは、顔赤いけど大丈夫?と言いながら隼人の頬を摘んだ。 「な、な、何してやがんだ!この破廉恥女!」 「まぁ、破廉恥だなんて時代錯誤な言葉。それでも貴方イタリアンなの?イタリアじゃキスの挨拶くらい普通でしょう?」 イタリアに行ったことはないけれど。 それにしても、本当に初ね、隼人は。 了平は確かにあたしの言ったことだからって恥ずかしげもなく遂行してくれるからちょっと拍子抜け。 ああ、でもそんなところが可愛いんだけどね。 「・・・・・・あ、忘れてたわ」 「?どうしたんですか、先輩」 あたしがふと思い出して言うと、目の前の綱吉は首を傾げた(綱吉も結構天然で可愛いわよね)。 たった一つ、決して遂行してくれないものがあったわ。 「いくら強請っても、誘っても、セックスしてくれないのよ」 「「ぶふーーーーーー!!!」」 「あら、大丈夫?」 大変、二人とも勢いよく噴いちゃったわ。 ゲホゲホと咽る二人を見ながら、あたしはまた口を開いた。 「結婚するまでダメなんですって。そんなこと置いて襲いたくなる、っていう魅力が無いのかしら。それともあたしにその気にさせるテクが足りないのかしらね」 なんていっても、了平が初恋だもの。というかこれってプロポーズなのかしら・・・って了平はそこまで頭が回らないわよね。 「!!極限迎えにきたぞ!!」 ガラリと突然扉が開いて、了平がやってきた。なんにでも極限ってつけるのが凄く可愛いわよね。 「ありがとう、了平。ねぇ、悪いんだけど、これに名前と住所とはんこを押してくれるかしら」 あたしがお母様から判子を借りてるから、はいどうぞ。あ、あと了承も得てるわ。 「?よくわからんが、分かった!」 書き終わった紙を見て、あたしは綱吉にそれを見せた。 「ねぇ、これ不備がないかちゃんと確認してちょうだい」 「はい・・・って、え!先輩、こ、これってっ!」 ビックリした綱吉と隼人の顔があたしを見つめる。 「さ、今日は帰ったら市役所に用事があるから一緒に来てくれる?やっぱりこれは二人がいいもの」 ね?と腕に抱きついて言うと、了平は快く了解した。 「・・・・・・・・・フフフ、これで了平の貞操はいただきね」 小さな声で呟くと、綱吉と隼人が真っ青な顔をしてしまった(あらやだ、聞こえてたの) |