「はぁっ、ひ。・・・ぅく、ふ」 声が漏れてしまわないように唇を強く噛み締めた。 感覚はもう無くて、零れた涙も分からなかった。 後ろで隼人が心痛な顔をしてる(ああ、でも貴方を責める気なんてないのよ)。 武も苦しそうな顔をしていた(ああ、でも貴方を責める気なんてないのよ)。 まだ、彼の喪失は伝えられてないという。 そうね、そうだわ、大変だもの。 彼が死んだということが伝わっては、ボンゴレの崩壊を早めるだけだもの。 ドン・ボンゴレが死んだことは、バレてはいけない(まるで昔の戦の大将のようね)。 「つ、なよ・・・綱吉っ」 ポタポタとあたしの目から生きている間しかあふれてこない涙がボロボロと綱吉の顔に降り注いだ。 あなたは真っ青な顔をしているけれど、まるで生きているみたいにあたしの涙を流していた。 綱吉、どうして貴方が死んでしまうの? 沢田綱吉が死んでしまって、今ボンゴレに大変なことが起きていて。 ああ、もう、どうしたらいいのか分からない。 「ひ、うっ・・・・・・つなぁっ!」 呼んでも指先ですら、まつげすらピクリとも動かない貴方は、ただ黒い棺おけの中で花に埋もれて綺麗に綺麗に横たわっていた。 やだよ、やだっ! どうして死んでしまったの?綱吉。 言ったでしょ、言ったじゃない、貴方は私に言ったじゃない。 「ずっと一緒にいるよって、言ったくせにっ!」 うそつき。 「さん、そろそろ10代目を別の場所へ」 隼人と武が綱吉を棺おけごと持ち上げる。 「いやっ!やめてぇっ!」 黒い棺おけに縋りついた。 「綱吉は死んでなんてないんだから、一緒にいるよっていったんだからっ!死んでないんだからぁっ!!」 連れて行かないでよっ! 早く目を開けて、嘘だよって笑って? ねぇ、綱吉。 「さん・・・」 隼人が俯いて、武が目を逸らした。 死んでるって分かってたけど、それでもあたしは目の前の綱吉の死体に縋るしかなかった。 「綱吉の、ばかっ」 どうして死んでしまったの?(あんなにも一緒にいるよと約束したのはあなたなのに)。 「あれ?」 パチリと目が開いた。 あたしの世界は突然光に包まれ、そうして温かみに溢れて、穏やかだ。 「大丈夫?。うなされてたみたいだけど」 ゆるりと横を向けば心配そうに顔を覗き込んで、頭を撫でる綱吉。 とても暖かくて優しいてが触れる(ああ、夢だったのね)。 「綱吉、ねぇ、綱吉。あたし、貴方が死んでしまう夢を見たわ」 「何でそんな縁起が悪い夢を」 綱吉が困ったような顔をした。 ああ、でも、夢でよかった(一体どっちが夢?)。 |