パタパタとお母様はスリッパを鳴らして忙しなく駆けていく。

それは昨日も見た風景で、毎年毎回みんなの誕生日に本当に頑張るなって思う。
(まぁ、お父様の時はお母様の気合度が違うんだけど)


「あ、ちゃん!これ運んでもらっていいですか?」
お母様は昔からよくあたしに頼みごとをしてくれて、小さいときは頼られてるって嬉しかった(今も嬉しいけど)。


「ハル、、手伝おうか」
ひょこりと顔を覗かせたのは、あたしのあげたネクタイをしているお父様で。

「「主役は座ってて(ください)!!」」


二人で声を揃えていった(お父様は困った顔をして戻っていった)。
昨日ならまだしも、今日は手伝ってもらうわけには行かない。




やっと料理も揃って、ケーキも置いて。

そうして椅子に座った途端に、お母様が手を合わせて嬉しそうに言った。
「Auguri a te歌いましょう!」
「え・・・」
お父様が困ったように呟いた。

お母様・・・流石にもう30過ぎてるんだから・・・それは。
(ちなみに、Auguri a teは日本でいうHappy Birthday to youのことなんだけど)

確かにリボーンには歌ったけど・・・(あれはリボーンへの誕生日プレゼントだったし・・・)。


「もう!何度言ったらわかってくれるんですか?今日はツナさんの誕生日のお祝いであり、ツナさんが生まれてきてくれたことにありがとうって言う日でもあるんです!・・・歌ったら、迷惑ですか?」
じわり、とお母様の目に涙が浮かんだ(でた、お母様の懇願泣き)。

「ち、違うに決まってるだろ!ハルが俺のためにしてくれることで迷惑なことなんてあるもんか」
出た、バカップル。
お母様は「ツナさん・・・」と呟いて嬉しそうに見あげて、にっこりと笑った。


「じゃ、歌ってもいいですよね!」
・・・時々、お母様の行動が全部計算に見える・・・(いや、お母様は天然なんだけど・・・なんだけど・・・)。

「もちろん」
あーあ、お父様も嬉しそうな顔してるし。


「それじゃあ皆さんも一緒に歌いましょう!」
仕方が無い、と毎年のことなので皆苦笑した。


「Tanti auguri a te!Tanti auguri a te!Tanti auguri ツナさん!Tanti auguri a teー!」
一番ノリノリだったのはお母様だって追記しておく。
(さり気なく恭弥さんも歌っているのは皆見て見ないふりをしておく)



「ツナさん!ハル、ハル・・・ツナさんに逢えて結婚できて、ちゃんっていう大切な子が出来てとっても嬉しいですっ!」
今度は感涙で泣き出したお母様に、お父様が仕方が無いなって涙を拭ってあげていた。

「俺も、幸せだよ」
ありがとう、といってお父様はあたしも呼んで、お母様と一緒にぎゅーっと抱きしめてくれた。




「そういえばツナさん、お誕生日プレゼントがあるんです!」
「何?」
ニコニコしてるお父様に、お母様がさらにニコニコとして言った。


「あたらしい家族ですよ!」
「へ?」


どうやら、あたしに弟妹が増えるそうです。





Love Song



( 毎年だけじゃなくて本当は毎日歌いたい、生まれてきてくれて、この場所を選んでくれてありがとう!って )