「にんげん、あきらめがひつようなのよ」


「・・・へ？」


突然ビシっと指を刺しながら言ったの言葉に、星野は片づけをしていた手を止めて、きょとんと小さな彼女を見た。
自信満々に言い放つ少女の顔は若干怒りも含まれていて、それに尚更首を傾げる。

「あのね、しつこいおとこはきらわれるの」
「・・・・・・？」
「うさぎせんせーは、もうひとのものなんだから、いいかげん、げんじつをみなきゃ」
「ぐはっ・・・！」

ぐっさり刺された。
高校の時に片思いしていた少女は、卒業と同時に結婚し子どもを産んだ。
未だに諦めきれない想いを見抜かれているのか、ばっちりとその子どもには嫌われていたりする。

「いろいろしこめる、わかいこにくらがえしたほうがいいのよ」
「ちょ！、それどこで教えてもらった！？」
「ママが、せーやせんせいに、そうおしえたげなさいって」
「・・・さん・・・！！」
がくりと崩れ落ちる。
の母親は何かとにそういったことを教えている。
仕込めるとか、何教えてんだ、本当に。


「はね！大きくなったらおりょうりじょうずになるの！」
「へ？あ、ああ、そっか・・・」
突然話題が変わったことに戸惑いつつも子どもにはよくあることだと星野が頷いた。
それにが楽しそうに胸の前で手をあわせながら言う。
「こんびにべんとーしか食べてないせーやせんせーに、いっぱいおいしいのたべさせてあげるね！」
「！？いや、別にコンビニ弁当しか食べてないわけじゃねぇぞ！」
「じゃー、ほかべん？」
「・・・」
否定できません。ばい、星野。

しっかり園児に指摘されたことに否定できないでいると、さらにはにこにこと笑いながら告げる。
「いっぱいおいしいりょうりたべたら」
「・・・？」
「もたべていいよ！」

ぴたり、と星野の動きが止まる。
と言えば自分の発言を理解していないらしく、不思議そうに星野を見上げるだけで。

「・・・さ、」
「？せーやせんせー？」
「何教えてんすか、さーーーーーん！！！！！」

どこか明後日の方向を向きながら叫んだ星野に、は不思議そうに首を傾げていた。