「、今日も最後までなんだ」 もう園児のいなくなった一人っきりの教室に、ふいに声がかかった。 それにはぱぁっと顔を輝かせて、その声の人物の元へと走り寄る。 「やてんせんせー!」 「ん」 ぽすん、と音を立てて足に抱きつけば、何の苦もなく抱きあげてくれる。 子どもにすら笑いかけることはないが子どもが嫌いではないらしい。 「あのねー、のパパとママはがんばってるからおそいんだよー」 「医者だったっけ?」 「うん。もね、大きくなったら、おいしゃさんになるの」 「・・・まぁ、頑張れば?」 「でもね、やてんせんせーのおよめさんにもなるの!」 ぎゅ、っと抱きついてくるに、夜天は小さな頬笑みをバレないように浮かべて。 「まぁ、頑張れば?」 今度は少しだけ楽しそうに言った。 「それにしても、は夜嫌いじゃないの?」 大体夜間保育などでは夜の暗さを怖がって泣きだす子どもが多いせいか、外が真っ暗になろうとも「まっくらだー!」とはしゃぐがよくわからなかった。 いや、勿論手がかからないという面ではいいのだろうが。 そう思い夜天が尋ねると、が不思議そうに首を傾げた。 「、夜だいすきだよ?」 「・・・なんでまた」 嫌いじゃない、ではなく大好き、とまで言い放ったに、夜天が首を傾げる。 母親曰く、7、8時ごろになるとすこん、と寝てしまうらしく、朝までぐっすりらしい。 そう考えると夜に何か楽しいことがある、というわけでもないと思う。 「だってね、夜はやてんせんせいだもん」 「・・・は?」 その言葉に、夜天がきょとんと首を傾げる。 夜間保育の当番のことかと思ったが、が残っているのは毎日で、星野と半分半分だから、夜間保育=夜天、という図式は正しくないだろう。 そう思っていると、がぴしっと小さな人差し指を伸ばして上に挙げながら、夜天ににっこりと笑顔を向けた。 「夜のおそらはやてんせんせーだから、こわくないの」 「・・・」 「いっつもね、やてんせんせーがいっしょだから、こわくないよ!」 自信満々で言うの言葉に、夜天は思わず二の口を告げることが出来なかった。 夜天、の漢字を理解できているとは思えないから、きっと母親か何かに教えてもらったのだろうけど。 ・・・それにしたって。 夜天は顔を抑えたままから見えないように顔を逸らした。 これは、反則だ。 「どーしたの?やてんせんせー」 「・・・何でもないよ」 不思議そうに顔を覗き込もうとしてくるの顔を抑えながら、夜天は小さく呟いた。 |