「あー、あー・・・日吉はいいよねぇ・・・。あの眉間の皺とか、髪型とか、手足の筋肉とか、髪型とか、フォームとか、髪型とか、髪型とか髪型とか、あとは髪型とか」 うっとりと見つめてると、隣にポスンと誰かがやってきた。 「髪型は一回でいいんだよ、馬鹿」 「うっさい、馬鹿って言ったほうが馬鹿なんですー、馬鹿跡部めが」 隣にいるのは、一応先輩な跡部。 ちくしょう、お前なんて日吉に「下克上だ!」って思いっきり執着されてるくせに。ちくしょう。 「は。てめぇよりは頭良いんだよ」 「はい馬鹿ー。そこで頭良いところが馬鹿じゃないって言っちゃうところが馬鹿ー」 「なっ!」 そう言うと跡部は壁につけてた背中を外して、ギロリと睨んできた。 先輩だからって泣きボクロだからって顔が美形だって、全然恐くないっていうか、好みの範囲外だから謝る気も起きないね! これがジロちゃん先輩とか、鳳君だったりとか捨てられた仔犬みたいな目線に頭撫でて謝りたくなるし、忍足先輩だったら速攻で謝るし(後が大変だから)、宍戸先輩だったら・・・あれ、謝る気起きないや。 それはともかくとして、あたしはそんな跡部にちらりと視線を向けて、それからまた日吉ウォッチングをはじめ、 「うぉ!い、いつのまにこんなに近くへ!」 と思ったら、日吉が何故かすぐ近くに来てて、ウォッチングどころじゃなくなってた! きょ、距離が近いから日吉が凄く良く見える! 「ドリンク取りに来たんだよ。・・・なんだよ、」 そんなに見てきて、と日吉が言うほどに、あたしはじっくりと日吉を見つめていた。 「あー・・・ねぇ、日吉」 「なんだ?」 ジャージの裾をひっぱると、日吉がドリンク飲むのをやめて律儀に反応してくれた。 「触っていい?頭撫でていい?襲っていい?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 あ、ものすごい顔して黙った・・・。そう思ってると、後ろで跡部がはぁあ・・・と重い溜息を吐いて、日吉がそっちを向いた。 ちくしょう、ライバル視されてるからって溜息で視線を奪いよって・・・。 「とりあえず、・・・。一応こいつも思春期なんだよ。わかってんのか、あーん?」 でた、ご自慢のあーん?だ。 「そうか、跡部は全然純粋な思春期少年じゃないもんね。廃れちゃった大人だもんね。狼さんだもんね」 うん、ごめんね。純粋な思春期には到底戻れない跡部よ。というと跡部の米神に青筋が浮かんだ。 「・・・てめっ、犯すぞこら!」 「日吉ー、球出ししてあげるー」 「って無視か、てめぇ!!」 後ろで思いっきり叫んでる跡部を放置して、日吉の手を掴んでコートまで歩いていった。 よっしゃ!今日は手繋げた! あの、女ったらし跡部に言わせれば「そんなことかよ、あーん?」なんだろうけど、私とってはかなりの快挙だ。なんせ、日吉だし。 コートについた途端自然と外れてしまった手を思わず反対の手で握り締めて、ちょっとだけ日吉の冷たい体温を思い出してた。 は!にやにやしてたかもっ! ひ、ひよしに見られて、「なんだ、この変態女?」とかって思われてないよね!?と思って日吉の方を見てみたけど、既に反対のコートにいて、準備をしてた。 あー・・・良かった。 安心して、あたしも反対のコートに入って、準備した日吉に球出しをはじめた。 「ったく、さっさと気づいてやれよな・・・」 と溜息まじりの跡部の台詞は、日吉の球出しに夢中になってたあたしには届かなかった(っていうか、距離的にも無理だけど)。 |