「・・・もう、駄目だ・・・」 ガクリとあたしは地面に項垂れた。 目の前で沈黙してるのは、忍足先輩。というか、先輩・・・。 「何笑ってるんですかぁっ!!」 馬鹿ー!馬鹿ー!!今度から忍足先輩じゃなくって、伊達眼鏡先輩って呼んでやる!今決めた、はい決めた! というわけで忍足先輩こと、伊達眼鏡先輩が漸く笑うのをやめた。 「や、せやて、ちゃんそんなヒロイン風に落ち込まんでもっ!ぶっ、くく!」 「うるさいですよ、伊達眼鏡先輩!あたしもちょっとあいたたたぁ・・・って思いましたけど!思いましたけど!普通こういうときって何かあったの?って聞くべきでしょうが!」 この伊・・・お、忍足先輩めが!(目、目が・・・目で殺される・・・!素敵な意味じゃなくて、本当に殺気を感じる・・・) 「ま、それはともかく。何があったん?」 よしよしと頭を撫でてくる忍足先輩・・・って、この人も原因の一人だった。 「忍足先輩も加担してるんですから!」 このエロ伊達眼鏡先輩めぇ!と叫んだのは内心だけだ(いや、口にしたら本当に後が恐い)。 他の皆にはやられキャラなのに、どうしてかあたしは忍足先輩には敵わない・・・。 「はいはい、落ち着き」 「う、うぅ・・・せ、ぜんばいが悪いんですっ!ジロちゃん先輩も、跡部も、忍足先輩も、宍戸先輩も、皆あたしにお菓子たくさん食べさせるからっ!」 「あー。ちゃん太ったんかいな」 「煩いわーー!!!」 普通女の子にそれ言いますか?いや、日吉以外に女の子として見られたってどうしようもないんだけど、っていうかそう見られたいのは日吉だけなんだけど。 あなた、遊び人なんですから、もうちょっと女の子への気遣いってもんをですねぇ、本当に。そう思ってると、忍足先輩がよしよしと撫でてくれていた。 「そんなことゆうたかて、それで運動せんかったんはちゃんやろ?」 「うぐっ」 た、たしかにそうとも言う。っていうか、そうとしか言えない。 確かにマネージャー業は厳しいけど、洗濯機は全自動だし、部室は基本的綺麗だし(跡部が汚すなって煩いから)、あとはスコアとか書いたりとかドリンクつくったりとかだし、重労働ってほどじゃない(そりゃ、時間のやりくり大変で、なんだかお母さんの気分になるくらいだけど)。 ともかく、運動しなかったのはあたしだけど。 「皆がお菓子くれるからー!うわーん、デブになって日吉に嫌われるー!」 好かれてるなんて思ってないけどさぁ、嫌いだとも多分思わないんだよ!そりゃ、変な子扱いはされてるだろうけど。 嫌いな子だったら手握ったら振りほどくだろうし(だって日吉だし容赦なさそうだし)、話し掛けもしないだろうし(だって日吉だし容赦ないし)。 だけどデブになって、さらに嫌われたらどうしようっ! 「ちょ、先輩っ!!何やってるんですか!」 うぉおお・・・と泣いて忍足先輩が頭を撫でてくれていると(というか、廊下に座り込んでるから尻冷たくなってきたー)、突然走る足音が聞こえて、振り返ったら日吉がいた。 「おー、態々走っておつかれさん」 「っ!・・・!何やってんだよ!」 何って、忍足先輩に愚痴って・・・おぉう!? そうこう考えてる間に何時の間にか体が浮いていて・・・って、あれ?この脇に入ってる手は日吉の?っていうか、目の前の笑ってる忍足先輩の両手は見えるから、ってことは背中に居るのは日吉で。 「う、うぇえええ!?」 あれ、あれ、あたし、どこに連れてかれるんでしょうか、日吉さん! 目の前でさっきまで笑いながら頭を撫でてくれていた忍足先輩はさっきよりもニヤニヤしながらヒラヒラと手を振っていて、後ろにはなにやら怒った日吉があたしの脇に手を差し込んだ状態のままズルズルと引っ張っていきました。 「(た、体重ばれ、るっ!)」 気にするのそことちゃうやろ、という忍足先輩の声が聞こえた気がした。 |