「おはよー鵺」
「おう、。はよー」
がしゃん、と椅子を動かして、席についた。


あたしの席は鵺の隣だ。
ビヨンビヨンと走るたびに揺れそうな(でも実際は揺れない)触覚みたいなのを持った鵺は、何だか人気らしい。
まぁ、顔は格好いいんじゃないかな?


「今日って、社会どっち?」
「菅先生じゃね?」
「あー・・・宿題忘れた」

ガサゴソ鞄の中から筆箱と下敷きを取り出して、最後にみたらし団子を取り出した。

今日もあたしのおやつだ。


「そういえば思ったんだけどよ」
隣でカチャカチャゲームを動かしながら(どうやら赤と緑の兄弟のゲームらしい)、鵺があたしのみたらし団子を見てくる。

「・・・あげないよ?」
「いらねぇよ!!!っつか、そうじゃなくて、それ毎日食べてるよな」

「うん、食べてるね」
頷くと、鵺が神妙な顔をして頷いた。


「太るぞ?」

「うん、命はいらないと見た」


ベシっと思いっきり筆箱を、鵺の顔に投げつけた。
うん、命はいらないね。君そう言ったよね?

「でっ!」

一回投げると気が済んだので、また椅子に座った。


みたらし団子を持ち上げて、ちょっとためらって、口に入れた。
ふ、太らないよ・・・太らない、と、思いたい、し。
別腹ってものがあるから大丈夫だ!きっと。

三本せっとだったので、一本無理矢理鵺の口に突っ込んだ。


「うまー・・・」
「いや、美味いけど、何ではみたらし好きなんだよ」

「美味いから。あと、おいしいもの食べると、心が安らぐよ」
「ふーん」


まだ誰も居ない教室で(早く来すぎた)、モチモチモチモチみたらし団子を食べる。
みたらし団子って、おいしいけど、タレが手につくのが問題だ。


「んー、んんんんん」
「飲んでから喋れ」

「んーんぐっ。ねぇ、鵺〜」
「あ?」


飲み込めっていうから飲み込んで、クルクルみたらし団子を回しながら、呟いた。



「あたし、鵺のこと好きだよ」
「俺も」
それから鵺をみて、にやって笑うと、鵺もにやって笑う。


「恋人しよっか」
「おう」

そのまま口をつけたら、みたらし団子の味がした。





ファーストキッスはみたらし団子味



( ああ、甘い味。貴方は何時だって、私の好きなもの )


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