「右よし・・・左よし・・・」


よし、誰もいない。

真っ暗な闇の中で、ゴーグルをつけて、キャップを被って、服のフードを上から被った。
どこから見ても、少年。
最後に、なめし革の手袋をつけて、あたしは空へととびだった。



「おせぇ」
「ごっめーん。バレないように出ようと思ったらさ、時間かかっちまって」
あはは、と笑うと、鵺は小さく溜息を吐いた。

「トリックスター、今は大分終盤戦だぜ」
「え?マジで?えーっと、W牙の王に、ミツルで、あれが空の王候補だろ?」
覗き込んだ画面には、乱入してきた南樹君が、戦っていた。
4人の2対2で・・・あれ?

「なぁ、これって、キューブだよな?」
と横にいたスピさんに聞くと、スピさんが苦笑した。
相変わらず芸能人並に格好いいなぁ・・・スピさん・・・。


「ぶっ壊した・・・んだとよ」
でも、答えたのは鵺だった。

「まぁ、鵺きゅん!わたくし鵺きゅんに聞いてませんのことよ!!」
「・・・・・・・」
「・・・・・はーい、キモかったのは俺ですから、レガリア発動させないでくださいー」
今、本気でレガリア発動させようとしたでしょ。まったく、物騒だなぁ、本当に。

「それにしても、樹君は中々すごいね」
ニコリ、と笑って言うスピさんに、同意するように頷いた。


「確かにー。まぁ、俺の鵺きゅんには叶わないけどな!」
「キモいんだよ」


えっへん、と胸を張って言うと、鵺にキモい、といわれた。

「お、奥さん聞きまして!?俺の鵺きゅんが!あんなことを!!」
ガガーンと口で言うと、馬鹿だろ、と言われてしまった。
ひどいなぁ、鵺。

「それよりなにより、やっぱ元牙は、大分腕が落ちてるよな・・・」
ちょっと残念ー、というと、鵺がまぁな、と頷いた。


ピピピピピ。


電子音が鳴り響いた。
「あ、ごめん。俺の携帯・・・」
パカっと、携帯を開いて、小さく、息を吐いて折りたたんだ。

「ごめん。約束できちゃった。お・ん・な・と☆」
「うぜ!さっさと行ってこいよ」
ゲシゲシ、と鵺に蹴られる。

「じゃあねー」
ヒラヒラ、と手を振って、あたしはそこからA・Tを滑らせた。





偽るのも、楽じゃないんだよ?



( ほら、きしみ始めた音が響く )


←