沈黙が、怖かった。
どんな言葉も、受け入れようと思っていたのに。
怖くて、怖くて仕方が無かった。


「トリックスター・・・、は」

ポツリ、と鵺が口を開いて、情けないくらいに、身体がビクリと震えた。
ただひたすらに、鵺から告げられる言葉を待った。
「別に、俺のこと、笑うつもりとか、そんなんでやってたわけじゃねぇんだろ?」
「当たり前でしょ!ただ、女だったら、馬鹿にされて・・・」
俯いて言うあたしに、だろ?と鵺が頷く。
「トリックスターがそんなことするヤツじゃねぇってのは、俺が一番知ってんだよ」
そう言う鵺に、少し泣きそうになった。
「もちろん、も」
鵺が一歩一歩近づいてきて、手を握った。
「・・・・・うん」


その手は凄く、暖かい。
どうしよう、凄く、泣きそう。


「俺は、も、トリックスターも含めて、が好きだぜ?」
鵺の言葉が、ジンワリとアタシを抱きしめる。
その手が、ぬくもりを与えてくれる。

は?」

鵺の言葉に、ゆっくりと顔をあげた。
「・・・あたしも、好きです」
一番一番、大好きです。




「ごっめーん、遅くなっちゃった、鵺きゅん」
「おせぇ、っつーかきゅんってつけるな!」

ムカっとして言う鵺に、ニヤニヤ笑いながら言う。
「バレないようにでるには仕方がなかったんだって」
ごめんって。
そう言うと、鵺は大きく溜息を吐いた。
「・・・今日は素に戻れ」
「何で?」
鵺の言われたとおり素に戻って、あたしはゴーグルを外した。
「今日はデートだからだよ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ鵺に、あたしは飛びついた。

「鵺大好き!」
「知ってるっての!」

ギュウっと強く抱きしめた。





涙の流す場所を見つけたよ



( 道化師だって、きっと涙を流すよ )


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