「おはようございます!翼先輩!」 ちょっと小首を傾げてにっこりと満面の笑みで。 全くもって美少女じゃないから、その辺は気合でカバーです。 「・・・おはよう」 そんなあたしにチラリとだけ視線を向けて、ちょっと呆れた顔をしてはぁって溜息を吐いてから翼先輩は小さくそう返した。 ああ・・・あたし、翼先輩の溜息で呼吸したい・・・。 ・・・誰だ、今こいつ変態だって言ったの。 「低血圧ですか?翼先輩。朝からアンニュイな顔もとても素敵ですけど」 「目覚めはすっきり爽快だったけどね・・・朝っぱらから玄関先での顔を見ると一気に血圧下がったよ」 「翼先輩はちょっと導線短いですから、低血圧くらいが丁度いいんですよ!」 ぎろり、と翼先輩の綺麗な瞳があたしを睨んだ。 「・・・はぁ」 けど、翼先輩はまた呆れたように溜息を吐くだけだった。 あれま、溜息を吐くと幸せが逃げますよ?翼先輩。 「それにしても、毎朝御苦労なことだね。普通さ、こういうのって男が女を朝迎えに行くもんじゃないの?」 「え!?翼先輩迎えに来てくれるんですか?」 「んなわけないじゃん。何でわざわざ正反対まで行かなくちゃいけないのさ」 ざっくり、と切られてしまった。 うう・・・酷い・・・。 でもまぁ、翼先輩を迎えに行くためなら千里の道だろうと走り抜けて見せますけども。 ・・・というか、翼先輩さり気なく、迎えに行くのが嫌とは言わないんですね・・・。 「じゃあやっぱり、あたしが翼先輩を迎えに行くのであってるじゃないですか」 「・・・そういう問題じゃないんだけど」 なんやかんや言いながらも、先輩はあたしを置いていこうと走っていったり、もう来るななんていわない。 マシンガントークとかで嫌味を言われたりはするけど、本当にあたしのことを拒絶したりはしないって気付いた時は、涙が出た。 ああ、本当に好きだなぁ・・・。 「・・・?何してるのさ」 じんわりと胸に広がった暖かい感情をかみしめていたせいで足が遅れていたのか、ちょっと前のところで翼先輩が振り返った。 うん、ほらやっぱり優しい。 あたしのこと放っておいて先に行ったっていいのに、立ち止って訝しげな顔しながら今もあたしのことを待ってくれている。 翼先輩のことを高慢だとか、傍若無人とか言う人がいるけど、でも本当はすごくすごく優しい人だって思う。 やっぱり、すごく好きだ。 訝しげな顔をしてる翼先輩に、あたしは顔が熱くなって溶けるように表情が崩れるのを止められなかった。 多分、物凄いだらしない顔してるんだろうな。 「翼先輩のこと、物凄く好きだなぁって思ってました」 えへへ、と笑い声が漏れる。 馬鹿だし運動もできないけど、あたしが一番誇れることは、翼先輩を好きになったってことだと思う。 そんなあたしに翼先輩はすぐに振り返って、それからずかずかと歩き出した。 「そんなこと、朝から考えるなよ!・・・ほら、さっさと行くよ!」 怒ってるのか呆れてるのか、わかんないけど。 でも絶対にあたしを置いていくなんて言ったりしない翼先輩に、やっぱり好きだー!って気持ちと嬉しさがこみ上げて、あたしは大きく頷いた。 「はい!」 |