黒と白で彩られたボールを、背丈も何もかもが違う人たちが追いかける。 ボールが生きている間は、ずっとずっと少しの休憩も挟むことなく、ボールを目で追いかけ、周りを見て、それから走る。 疲れてたって、もう走れなくたって、ボールが目に入れば追いかける。 それが、翼先輩の世界。 「休憩にしましょう!」 ボールがラインを超えて皆が少し立ち止まった瞬間に、あたしは大きく手を叩いた。 それにはっと皆が顔をあげた。 ボールが生きている間は、例え休憩時間になろうとも声はかけないこと。 それが、あたしの決めたルール。 翼先輩は特に何も言わなかったけど、途中で水を差すってその時だけじゃなくて後もずっとやる気をなくしてしまう気がして。 ・・・まぁ、自論なんだけど。 そんなわけで丁度ボールがラインを越えた後で皆に声をかけた。 「はい!翼先輩。ドリンクとタオルです」 「どーも」 翼先輩はあたしが駆け寄ってくるのを見ると、ふってちょっとだけ笑ってくれてタオルとドリンクを受け取ってくれた。 あー・・・格好いい・・・。 「ー、俺のドリン、」 「あっち置いてあります」 誰かが声をかけてきたけど、翼先輩から視線をそらさずにドリンクの方をさした。 それくらい自分で取ってください。 「・・・相変わらず、翼贔屓だな」 「贔屓なんて言い方やめて、黒川君!あたしは翼先輩至上主義なんだから!」 贔屓なんてもんじゃないんだから! そう言うと、黒川君が苦笑した。 「あー・・・悪かったって」 「二度目はないからね!」 ふんっと黒川君から視線を外して、翼先輩の方を見る。 あぁ・・・その流れ出る汗で体中の水分を構築されたい・・・。 翼先輩がドリンクをのみ終わって、ぐいっとタオルで口元を拭った。 「あぁ・・・格好いい・・・!」 何がって、もう全部が。 「・・・ほんま、も物好きやな・・・っつーか、翼なら、どっちかっつーとかわい、」 「・・・直樹?」 「じゃ、じゃなくて・・・!」 ぎらり、と翼先輩の鋭い眼光に井上先輩があわて始めるけど、あたしは全部ちゃんと聞こえてましたからね! 「翼先輩のどこに、可愛いって要素があるんですか!」 ってい、このサル目井上先輩め! 翼先輩はよく可愛いって言われたりしてるみたいだけど、全然納得できないんだよね! 「いっつも背筋綺麗に真っ直ぐだし、筋肉ついてるから腕だって女の子より断然太いですし、キビキビ行動して細かいのに、ときどき結構大雑把で、すごく男っぽいじゃないですか!そんな翼先輩は、物凄く格好いいですけど、可愛くありません!」 身長高かったり目が横長かったりすれば格好いいなんて、一体だれが決めたんだっつーの! 何よりも、翼先輩は自信に満ち溢れていて、生きる姿勢がすごくきれいで格好いい人だと思うのに。 「そんなわけで、翼先輩は格好いいんです!」 びしっと井上先輩に人差し指を突き付けた。 ・・・はぁ、満足した。 「・・・翼、大丈夫か?」 「ちょ、今こっち見るな、馬鹿!」 |