「・・・だから、この・・・馬鹿っ!」 翼先輩ががくーって崩れ落ちた。 あれ?何でみなさん顔赤いの? わけわかんなくてキョロキョロとあたりを見渡してると、口を押さえて肩を揺らしてる監督が目に入った。 え、監督爆笑? 「え?え?何が起きてるんですか、一体」 「全部のせいだよ!」 「えぇ!?」 ベシっと頭を叩かれて怒られるけど、わけがわかんない。 何であたしのせいなんですか? だって、正直な気持ちを言っただけで。 「・・・ねぇ、本当に俺なら何してもいいわけ?」 「はい!殴られようと蹴られようと!一生ついていきますから!」 そう胸を張っていった途端に、はぁ・・・って、まわりから一気に溜息が聞こえた。 へ?何? 何でそんなに落胆したような安心したような・・・。 「そんなことだろうと思ったよ・・・」 「翼先輩?」 何で翼先輩はより一層落胆したような顔をしてるんですか? うむむ・・・。 じっと考え込んでた翼先輩が、ふいに顔をあげた。 「・・・ねぇ、本当の本当に、俺なら何をしたっていいわけ?」 お、おい・・・っていう誰かの声が聞こえたけど、それに反応するよりも、翼先輩の言葉にこたえる方が大切だ! 「勿論です!・・・あ!で、でも・・・!!」 翼先輩がするなら何でもいいですけど、でも! 「でも?」 「その・・・嫌いになれとか、来るなとか、そう・・・いう・・・命令は・・・いや、です・・・」 いや、ほらさ、翼先輩が本当にあたしのことを嫌いになっちゃったら、それは、仕方がないかもしれないんだけど。 多分、多分ね、自惚れかもしれないけど、今のところ嫌われてはないだろうなぁって思うし。 そ、そんな命令だけは・・・い、嫌だ。 「馬鹿。妄想で泣いてるんじゃないよ。そんな命令する予定なんてないから安心しなよ・・・」 仕方がないね、って言って翼先輩が裾で涙を拭ってくれた。 う、相変わらず格好いい・・・。 本当は、全部しってる。 こんなにも優しくて強い人が、あたしがマネージャーになったせいで苛められないようにって手回ししてくれてるのも。 一人でも馬鹿だったら下山に尚更目をつけられるから、なんてそう言いながらあたしに勉強を教えてくれるために態々例題をたくさん作ってくれたことも。 そんな、翼先輩だから。 殴られようと、蹴られようと、何をされてもいいって思うんです。 「・・・翼先輩、大好きです」 「知ってるよ、馬鹿」 |