「あら、ツっ君、お友達?」

「と、友達って・・・えっと、ザンザスっていうんだ・・・おじいちゃんに頼まれて、ものすごい演技込で修業してくれた人・・・・・・」


笹川のお兄さん曰く、相撲大会が終わって爆睡した次の日に双子の兄の綱吉が連れてきた男の人は、明らかに友達って感じの風貌じゃありませんでした。
なのに、お友達って、お母さん・・・。


「そう、ザンザス君っていうのね」
「・・・邪魔する・・・」

お母さんのペースにちょっと驚いてるのか、小さな声でそうつぶやいたザンザスさんに、綱吉がちょっと驚いた顔をしてた。
あたしはその間、ずっと何も言うことができなかった。

だって・・・だって・・・。


・・・?どうしたんだよ」

ひらひらと綱吉・・・否、お兄様があたしの前で手を振る。

ああ、お兄様。
あたしちょっとダメツナってからかわれるお兄様が恥ずかしくてちょっと距離を置いていたときもあったけど、今これほどまでにお兄様を愛して尊敬してやまない気持になったのは初めて。

座ってたソファから勢いよく立ち上がって、ザンザスさんに一目散に近寄って行った。

「ちょ、・・・!?」
後ろからお兄様・・・疲れるから綱吉でいいや・・・綱吉の焦った声が聞こえるけど、総無視しておいた。

ごめんね、綱吉。


恋に生きる女の子って、時として世界を巻き込んでも許されるのよ。




「ザンザスさん!」
「・・・あ?」

声を張り上げたあたしに、ザンザスさんがちょっと鋭い目であたしを見た。
その途端ゾクゾクと背筋を走る何か(確かリボーン君が超直感と言ってたんだけど)に、あたしは身震いした。



「っ・・・好きです大好きです愛してます!!あたしが幸せにするので結婚してください!!とりあえず婚約から!!!」



ビシッ!!と90度腰から体をまげて頭を下げたあたしに降り注いだのは、静かなほどの沈黙だった。
無論、それはツッコミ大好き(本人は不本意らしいけど)の綱吉によって打破されるのだけど。

「えええええ!?!?ちょ、いきなり!?っていうか、ザンザスとって初めてだよね?会うの!!」
「うるさいわ、綱吉!出会った瞬間から恋の花咲くときが訪れるってもんよ、っていうか訪れさせるわ、私が!」
「強制っ!?・・・っていうか、母さんも黙ってないで何かいってよ!」
綱吉があたしの説得をあきらめたのか、後ろで事を見守っているお母さんに振り返った。

「あら、こんなに素敵な息子ができるのね。うれしいわ」
「もう決定事項っ!!・・・っ、ザンザスも!何か言ってくれよ!」


は!そうよね。
結婚は二人の話だもの、ザンザスさんの意見だって重要よね。
あたしは90度曲げていた腰をパっと上げて、背の高いザンザスさんを見上げた。

・・・これ結構大変だなぁ・・・。


「・・・・・・何かも何も・・・知らなかったのか、お前」
「へ・・・?何が?」

きょとんと綱吉がザンザスさんを見て、あたしもきょとんと見上げる。
後ろで髪の長い人が、お前らこうすると同じ顔だな、うぉ゛お゛お゛お゛い゛と言ってた。

っていうか、なんでおに濁点を付ける・・・。


「この女・・・に流れるブラッド・オブ・ボンゴレのせいで狙われないようにするために、既に9代目が俺との婚約を決めている」


カチン、と。
そう音を言うならそれにふさわしかったのかもしれない。

面倒くさそうに言うザンザスさんの言葉に、思わずあたしと綱吉が固まって・・・そして、同時に叫んだ。


「やったあああああああああ!!!」
「嘘だろぉおおおおおおお!?!?!?」




沢田14歳。
超格好いい旦那様ができました。





愛しの旦那様



( 初恋をした瞬間にその初恋が未来永劫叶っちゃうなんて、それなんて幸せ! )


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